アサーション・トレーニング(assertion training)

アサーション・トレーニング

アサーション・トレーニング』は、『行動療法』を起源に持つ訓練法であり、『社会生活技能訓練(SST)』の中の一つとして含まれる場合があります。

人は対人関係において、相手の言動に対し、自分の要求や気持ちを押し殺し、自己抑制的な態度をとってしまうことがあります。
その結果、心理的な怒りや不満がストレスとなり、不適応状態をきたすことが多くあります。

そこで生み出されたのが、アサーション・トレーニングになります。
アサーションはアサーティブ(assertiveness)とも呼ばれ、「自他を尊重した自己表現」といった意味を持ちます。

アサーション・トレーニングでは、自分の主張をはっきりと上手に表明し、互いが望むような結果を得られるような言動、振るまい方の習得を目指します。
それにより、対人関係にお ける自己抑制的な対応によるストレスを除くことを目的とします。

アサーション・トレーニングは、1949年に”ソルター(Salter, A.)”が、対人恐怖などの『神経症』の症状の治療において自己主張(アサーション)が有効であると提唱したことが始まりとされています。
その後、1966年に”ウォルピ(Wolpe, J.)”と”ラザルス(Lazarus, A. A.)”が、ソルターの考えやその重要性に着目し、アサーション・トレーニングが生み出されました。

ソルターは『条件反射療法』の提唱者としても知られています。
その中でソルターは、「人は本来活動的であるが、子ども時代に受けたしつけなどの学習の影響により抑制的になっている」と考え、「そのような活動性を取り戻すために自己主張(アサーション)が必要である」と考えました。

その後、ウォルピは行動療法を用いて神経症の治療を行う中で、自己主張(アサーション)が不安の抑制に有効であることを知ります。
このことについてウォルピは『逆制止』の考えに基づいて理解し、不安に対する拮抗反応としての自己主張(アサーション)の有効性を明らかにします。

このようにウォルピはラザルスとともに、自己主張(アサーション)の重要性や有効性に着目し、アサーション・トレーニングを生み出していきます。

アサーション・トレーニングでは、以下のような3つの自己表現の方法で区別されており、訓練を通してその違いを理解し、自他を尊重した適切な自己表現(アサーション)の習得を目指していきます。

  • 非主張的
    • 自分よりも相手を優先した不十分な自己表現
    • 「私はOKでない、あなたはOK(I'm not OK, You're OK)」
  • 攻撃的
    • 相手よりも自分を優先した過剰な自己表現
    • 「私はOK、あなたはOKでない(I'm OK, You're not OK)」
  • アサーション
    • 自分と相手を尊重した適切な自己表現
    • 「私もOK、あなたもOK(I'm OK, You're OK)」

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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