行動療法(bahavior therapy)
行動療法
『行動療法』は『学習心理学』を基礎に持つ心理療法の総称を指します。
1959年に”アイゼンク(Eysenk, H. J.)”によって『精神分析』との比較研究が行われ、行動療法の有効性が明らかになりました。
行動療法は以下をはじめとする様々な理論や治療法により構成されており、現在も発展を続けています。
- ”パブロフ(Pavlov, T. P)"による提唱された『レスポンデント(古典的)条件付け』
- ”スキナー(Skinner, B. F.)”により提唱された『オペラント(道具的)条件付け』
- ”ウォルピ(Wolpe, J.)”による『系統的脱感作法』の研究
- ”バンデューラ(Bandura, A.)”により提唱された『社会的学習理論』
- ”ベック(Becl, A. T.)”らの『認知行動理論』
行動療法の特徴は、臨床(患者への治療)を行う上で現在生じている問題を、「行動」として認識しそれを治療の対象とする点にあります。
行動療法における「行動」ははじめ、刺激(S:Stimulus)と反応(R:Response)の因果関係(『S-R理論』)の枠組みから理解されていました。
しかし、次第に認知や『スキーマ』と言った内的プロセスにも目を向けられるようになり、『行動療法』に認知的な要素が組み込まれていくようになります。
それにより、行動療法は『認知行動療法』へと発展していきます。
行動療法では治療を、学習の過程と捉えており、病理を追求するよりも、問題解決を目的とします。
そして、苦痛が軽くなり、より良い生活が送れるように生活の技術や社会技術(ソーシャルスキル)を学習することが治療の中心になります
行動療法の治療は、問題や目標を明確にすることから始められます。
そして、問題を構成しているいくつもの「行動」の関連を明らかにし、どのような「行動」を学習すれば問題が改善されるかを検討していきます。
また、問題の成り立ちを、適切な行動の「未学習」、あるいは不適切な行動の「誤学習」といった枠組みで捉え、適切な行動の学習あるいは、不適切な行動の修正を行うことで問題解決を目指します。
問題となる「行動」にはそれぞれに適合する技法が用いられます。
行動療法の治療はどの部分からはじめてもよく、問題の改善の効果は部分から全体へと広がっていきます。
そして、治療の効果が見られはじめると、治療者の手助けは徐々に減少していき、クラインエントは自分で「行動」をコントロールする技術を学習していくといった経過を辿ります。
行動療法は唯一の完成した人間モデルを持ってはいませんが、クラインエントの持っている問題に合わせて柔軟に技法を選べることが特徴となっています。
行動療法の理論モデルや治療法技法は以下のようになります。
理論モデル | 基礎理論 | 人物 | 治療技法 |
---|---|---|---|
『新行動SR仲介理論モデル』 | 『レスポンデント(古典的)条件付け』 | ”アイゼンク(Eysenk, H. J.)” | 『暴露療法/エクスポージャー』 『フラッディング』 |
『暴露反応妨害法』 | |||
”ウォルピ(Wolpe, J.)” | 『系統的脱感作法』 | ||
『応用行動分析モデル』 | 『オペラント(道具的)条件付け』 | ”スキナー(Skinner, B. F.)” | 『機能分析』 『バイオフィードバック』 『シェイピング』 『プロンプティング』 『トークン・エコノミー』 |
『社会学習理論モデル』 | 『社会的学習理論』 | ”バンデューラ(Bandura, A.)” | 『モデリング療法』 『セルフモニタリング』 『社会生活技能訓練(SST:social skill training)』 |
『認知行動療法理論モデル』 | 『認知行動理論』 | ”ベック(Becl, A. T.)” | 『認知療法』 |
『認知再構成法』 | |||
”エリス(Ellis, A.)” | 『論理療法』→『合理感情療法』→『理性感情行動療法』 | ||
”マイケンバウム(Meichenbaum, D. H)” | 『自己教示訓練/ストレス免疫訓練』 | ||
『マインドフルネス』 | |||
”カバット・ジン(Kabat-Zinn, J.)” | 『マインドフルネス逓減法(MBSR:mindfulness based stress reduction)』 | ||
『マインドフルネス認知療法(MBCT:mindfulness based cognitive therapy)』 | |||
”マーシャ・リネハン (Linehan, M. M.)” | 『弁証法的行動療法(DBT:dialectical behavior therapy)』 | ||
”スティーブン・ヘイズ(Hayes, S. O.)” | 『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT:acceptance and commitment therapy)』 |
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
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\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。