生物-心理-社会モデルとは?心理学にとって重要な理論のひとつ
ご覧くださりありがとうございます。
オンラインカウンセリングおはぎの上岡晶です。
今回は、自分や相手を理解するうえですごく助けになる理論の一つ「生物・心理・社会モデル」について解説します。
私はこの理論がとても好きで、日常でもカウンセリングでもよく用いています。
この理論は複数の視点から人を理解することを推奨していますが、本当にその通りだと感じますし、この理論のおかげで、人への理解の幅が広がり、思い違いや誤解による衝突の数がすごく減りました。
よかったらどうぞ取り入れてみてください~
生物-心理-社会モデルとは?
このモデルは、アメリカの医師であるジョージ・エンゲルス(George L. Engel)により1977年に提唱されました。
エンゲルスは、人間の健康や疾患には、生物学的、心理学的、社会学的な要因が複雑に絡み合い、影響し合っていることを指摘しました。
また、それらの要因を考慮することが医療の質を向上させることに繋がることも話しています。現在は、WHO(世界保健機関)もこのモデルを支持しています。
生物・心理・社会モデルは、人の行動や状態、心理現象を生物学的、心理学的、社会学的な視点から捉えようとするモデルのことです。
このモデルでは、人の状態を理解するには、一つの視点からでは不十分であり、生物学的、心理学的、社会学的な視点を総合的に考慮する必要があることを指摘しています。
生物学的な視点とは?
生物学的な視点には、遺伝的な要因や身体的な状態(脳、神経、内臓)などが含まれます。
例えば、祖先から受け継いだ遺伝的な要因、病気や怪我による身体的な状態などです。
人の行動や状態、心理現象には、遺伝子、ホルモン、神経系の働きなどが関与していることが知られているため、生物学的な視点を考慮に入れる必要があると指摘しています。
心理学的な視点とは?
心理学的な視点には、パーソナリティ(性格)やその人がもつ信念、感情、思考などの内面的な要因が含まれます。
例えば、ストレスや不安、認知(物事の捉え方)などです。
人間の行動や状態、心理現象には、それらの要素が関与していることが知られているため、心理学的な観点を考慮に入れる必要があると指摘しています。
社会学的な視点とは?
社会学的な視点には、身の回りの関係や、環境、経済や社会的背景、文化、宗教などが含まれます。
例えば、家族や友人との関係、学校や職場の環境、社会での役割や立ち位置などです。
人間の行動や状態、心理現象には、周囲の人間関係や社会環境が影響することがあるため、社会学的な観点を考慮に入れる必要があると指摘しています。
例)うつ病の場合は?
うつ病は、生物・心理・社会モデルが複雑に絡み合い生じる疾患です
生物学的な視点
生物学的には、脳内にある神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン)のバランスが崩れることが、うつ病の症状である気分や気力の低下に影響しているといわれています。
心理学的な視点
心理学的には、ストレスやトラウマ、負の思考パターンや自己効力感の低さなどが、うつ病の発症や悪化に関連しているといわれています。
社会学的な視点
社会学的には、家族や友人との関係、職場のストレスや孤立感、文化的な価値観の違いなどが、うつ病の発症や悪化に影響しているといわれています。
このように、うつ病の発症や悪化には様々な要因が複雑に絡み合っています。
そのため、単純な見方を避け、幅広い視点からそれぞれの要因に応じた対処法が必要になっており、治療では、薬物療法や精神療法、認知行動療法などの様々なアプローチが用いられています。
まとめ
生物・心理・社会モデルを取り入れることで、自分自身や他者の状態を総合的に捉えることができ、深い理解が得られ、それにより、効果的な関わり方やケア、対処法を見出すことができると思われます。
ただ、この理論に関する批判(例えば、一つの要因が強く影響しており、単一のアプローチで十分であるにも関わらず、他の視点を考慮し曖昧なアプローチになってしまうなど)もあるため、その人や状況に合わせた判断が必要になると思われます。
ご覧くださりありがとうございました~。ゆるゆるとやっていこうと思います~
参考文献
Engel, G. L. (1977): The need for a new medical model: A challenge for biomedicine. Science, 196(4286), 129-136.
中前貴(2010). 精神医学における生物・心理・社会モデルの今後の展望について. 精神神経学雑誌, 112巻, 2号, pp.171-174.