ロジャーズ(Carl Ransom Rogers)
ロジャーズ
"ロジャーズ(Rogers, C. R.)"は、1902年から1987年にアメリカで活躍した心理学者です。
『来談者(クライエント)中心療法』や『人間性心理学』の創始者の一人として知られています。
ロジャーズは厳格なプロテスタントの家庭で育ちます。
はじめ、農業に興味を持ちますが、その後神学へ、そして心理学へと関心を移していきます。
このような幅広い背景がのちのロジャーズの理論の発展に大きな影響を与えます。
また、ロジャーズは治療後の少年の再犯の事例に多く立ち会うなど心理学の研究と実践を通じてこれまでの理論の限界を感じます。
そのような経験から独自のアプローチを開発していきます。
ロジャーズの最も有名な貢献の一つが、来談者(クライエント)中心療法の創始です。
来談者(クライエント)中心療法とは、クライエント自身が持つ成長の力を重視し、クライエントが自己選択を行えるように援助する方法になります。
1942年からロジャーズは、人間の本質を善とする人間観をもとに、クライエントの自己成長や主体性、自己選択を援助する方法を打ち出しました。
このアプローチでは、カウンセラーはクライエントに対して忠告や意見を与えず、クライエント自身が問題を解決する力を持っていると考えます。
このようなことから、ロジャーズの技法は『非指示的療法』と呼ばれました。
その後、ロジャーズの技法は『共感的理解』、『無条件の肯定的関心』、『自己一致』を中心とした来談者(クライエント)中心療法へと発展していきます。
またロジャーズは、録音機器を用いて『心理療法』での会話の録音を行い、心理療法の科学性を高めたことでも知られています。
ロジャーズ以前の心理療法では、セッションの内容はあまり記録されず、治療効果は主観的評価に頼っている場合が多くありました。
そこで、ロジャーズは、心理療法での会話を録音することで、科学的に検証可能なデータの収集や心理療法の効果の客観的な評価、詳細な分析を可能にしました。
このような方法は、適切な訓練や専門家の育成にも利用され、、非医師が心理療法を行う道を開いていきました。
また、ロジャーズはその知見を生かし、『ベーシック・エンカウンターグループ』という『集団療法』を作り発展させていきました。
ベーシック・エンカウンターグループでは、参加者がお互いを深く理解し合い、感情や考えを自由に表現することが重視されました。
このような参加者の自己成長と人間関係の改善を目指すロジャーズのアプローチは、のちに『パーソンセンタード・アプローチ(PCA:Person Centered Approach)』として広く認識されていきます。
このように、ロジャーズの人間の成長と『自己実現』を重視したアプローチは、心理療法の分野だけでなく、対人関係や人種間の問題、教育現場、国際的な紛争解決などの広範な分野に影響を与えていきました。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。