臨床動作法(clinical dohsa-hou)
臨床動作法
『臨床動作法』は、"成瀬 悟策"により生み出された日本独自の『心理療法』になります。
はじめ『脳性麻痺』の子どもの肢体不自由の改善を目的として生み出されました。
臨床動作法とは、『精神障害』の理解や治療において、心の問題と一体的に動く「動作」に注目し、適切でない「動作」とそれに伴う『体験の仕方』の変化を促すことにより治療を行うとする心理療法になります。
成瀬は脳性麻痺の子どもの肢体不自由が催眠中に改善されることを知り、催眠なしでも同様の効果が得られるよう研究や検証を行いました。
それにより生み出されたのが『動作訓練』であり、後に『動作法』として発展していきます。
動作法は障害児者だけでなく、健康やスポーツ、災害被災者、高齢者などの分野でも用いられるようになり「障害児者動作法」、「健康動作法」、「教育動作法」、「災害被災者動作法」「高齢者動作法」として応用されていきます。
また、動作法は『動作療法』として心理療法の分野にも応用されるようになり、『神経症』や『うつ病』への治療法の1つとして有効性が確認されています。
このように動作法は臨床分野で用いられるようになり、全てまとめて臨床動作法と呼ばれるようになります。
臨床動作法では、人の心と体は密接に繋がっているという考えを持ちます
そして人の心の動きや働きについて、「動作」という生理現象、物理現象を通して理解しようとします。
一般的に「動作」は何かをしようとして体を動くことを表しますが、動作法においても「動作」を、自分の意図通りの運動を実現しようとする主体の主体的・能動的活動の過程と表します。
そして、「意図」したものと実際の体の動き(「身体運動」)を一致させようとしたり制御しようとする(「努力」)心のプロセスと言った側面にも注目します。
そのため、臨床動作法における「動作」は以下のような図式になります。
このように臨床動作法では、「動作」を「意図」や「努力」といった心の動きも含めて理解しようとし、「動作」を改善することにより体だけでなく心の状態の改善も図ろうとします。
特に「努力」の仕方(体験の仕方)に注目し、それをより良い方向に変えていくことが改善に繋がると考えます。
つまり、適切でない「努力」により、「意図」通りの「身体運動」が出来ていない状態から、「意図」通りの「身体運動」ができるよう、より良い方向に「努力」の仕方を変えていくことが自己コントロール感の獲得や適応的な生活に繋がっていくと考えます。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。