ウィニコット(Donald Woods Winnicott)

ウィニコット

"ウィニコット(Winnicott, D. W.)"は、1896年から1971年まで活躍したイギリス人の小児科医、精神科医になります。
対象関係論』の流れを汲む精神分析家の一人になります(『独立学派(中間学派)』)。

ウィニコットは、1896年にイングランドのプリマスに生まれ、経済的にも愛情面でも恵まれた環境で育ちます。

ケンブリッジ大学で生物学や医学を学び、1920年に医師資格を取得します。。
その後、ロンドンのパディントン・グリーン子ども病院で40年間小児科医として働き、子どもたちやその家族との関わりを通して、自らの理論の基盤を築いていきます。

そして次第に『精神分析』に興味を抱くようになり、1930年代後半から“クライン(Klein, M.)”の指導を受けはじめます。
ウィニコットはクラインに敬意を持ち、影響を受けながら理論を築き上げていきます。

しかし、理論や概念が固定化(最初の状態から発展しないこと)されてしまうことを危惧したウィニコットは、次第にクラインから距離をとるようになります。
それにより、ウィニコットは自らの理論を発展させていきます。

ウィニコットの生み出した理論や概念の基盤となっているのは、小児科医として関わった約6万人以上の子どもやその家族との日々の接触になります。
その中でウィニコットは、子どもの心の発達や成長には、子どもと養育者(主に母親)の関係やそれらを包み込む環境(父親、祖父母、地域社会など)の存在が非常に重要であると理解しました。

つまり、ウィニコットは、人の心や『精神障害』の理解と治療のためには、個人の内面だけでなく、環境との相互作用も考慮する必要があると主張しました。
そのような考えに基づき、ウィニコットは『情緒発達理論』や、『移行対象』、『抱えること(holding)』、『ほどよい母親(good enough mother)』、『本当の自己』/『偽りの自己』、『一人でいられる能力』などの理論や概念を生み出していきます。

ウィニコットの提唱した理論は、人の心の発達や、その成長過程における養育者や環境の役割を深く考察したものであり、その後の心理学や『心理療法』の発展に大きな影響を与えています。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

横川滋章・橋爪龍太郎(2015)『生い立ちと業績から学ぶ精神分析入門  22人のフロイトの後継者たち 』 乾 吉佑 (監修), 創元社.

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この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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