ソーンダイク(Edward Lee Thorndike)
ソーンダイク
”ソーンダイク(Thorndike, E. L.)”は1874年から1949年に活躍したアメリカの心理学者です。
ソーンダイクは1896年ごろから動物の知能や学習の研究を行いました。
ソーンダイクの研究では様々な動物が用いられており、特に猫を用いた問題箱の実験は有名です。
猫の実験箱の実験は以下の通りです。
猫の実験箱
実験箱の外に猫のエサを置きます。
箱の中にはヒモがあり、そのヒモを引くと扉が開き、箱の外のエサが食べられるようになっています。
箱の中に空腹の猫を入れます。
猫ははじめエサをとろうと、扉を引っかいたりしますが、とることはできません(誤反応)。
しかし、たまたまヒモに引っかかり扉が開き(正反応)、エサをとることができます。
エサをとるまでが一つの試行として、猫はこの試行を繰り返すことで、誤反応(扉が開かずエサがとれない反応)が少なくなっていき、正反応(ヒモを引き扉を開けエサをとる反応)に達する時間が短くなっていきます。
この現象を『試行錯誤学習』と呼び理解しようとしました。
このように、ソーンダイクの研究では人や動物の自発的な行動はどのようにして起き、学習されていくのか実験を通して理解しようとしました。
一方で、”パヴロフ(Pavlov, T. P)"の研究では、犬にエサを与える時に生じる唾液の分泌量を測定するなど、刺激に対して生じる生理的な反応を対象に実験を行いました。
そのため、どちらかというとソーンダイクは人や動物の能動的な行動、パヴロフは受動的な行動について理解しようとしたとされています。
猫の問題箱の実験などにより、ソーンダイクは試行錯誤学習や『効果の法則』『練習の法則』などを導き出しました。
ソーンダイクが導き出した理論は、その後”スキナー(Skinner, B. F.)”へと引き継がれ、『オペラント(道具的)条件付け』へと発展していきます。
一方でパヴロフが導き出した理論は、『レスポンデント(古典的)条件付け』と呼ばれる理論へと発展していきます。
また、ソーンダイクは『レディネス』や『ハロー効果』と呼ばれる概念の提唱者としても知られています。
- 試行錯誤学習
とりうる手段を問題場面に試み的に当てはめ、試みと不成功を繰り返すうちに解決を見出そうとするものを指します。
- 効果の法則
学習が生起するためには、反応が環境に対して何らかの効果を持つことが必要であるとしたものです。
- 満足をもたらす行動は、状況との結合を強め、行動を起こしやすくします。(『満足の法則』)
- 不快をもたらす行動は、状況との結合を弱め、行動を起こりづらくします。(『不満足の法則』)
- 満足や不快の程度が強いほど、結合力は大きくなります。(『強度の法則』)
このようにして、刺激と反応(S-R)が結合し、試行錯誤学習がもたらされると考えました。
ここから『強化』の必要性も唱えました。
- 練習の法則
刺激に対してある反応が反復(繰り返し)して起こると、その刺激と反応の結合が強められるという法則のことをさします。
- レディネス
ソーンダイクは学習の成立には個人差があることに気づき、この理論を提唱しました。
レディネスは準備性とも言われ、学習が効果的に行われるには、学習する側が、身体的にも心理的にも準備状態にあることが必要と考えました。
そのため、準備ができていない時(心身の未成熟、適切な予備訓練をつんでいない、興味あるいは動機づけが乏しいなど)の学習は、無効もしくは非効率になると考えました。
- ハロー効果
ハロー効果は、『光背効果』とも呼ばれます。
人や物事を評価する時に、ある特徴的な目立つ一面だけに影響されて、その他の側面も同じように評価してしまうことを指します。
ハロー効果は社会心理学における『認知バイアス』として知られています。
このように人の行動や学習には、刺激と反応の繋がりだけでなく、その間にある認知という要素も関わっている可能性があることを示しています。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。