エンカウンターグループ(encounter group)

エンカウンターグループ

エンカウンターグループ』は、1940年代後半に"ロジャーズ(Rogers, C. R.)"によって提唱された『集団療法』の一形態になります。

エンカウンターグループとは、参加者が互いに率直なコミュニケーションを行い、自己理解や他者理解を深めていくためのグループ体験の場を指します

ロジャーズは、カウンセラーの訓練の中で集中的なグループ体験が非常に有益であることに気づき、このアプローチを発展させました。

第二次世界大戦後のアメリカでは、急速な社会変化や戦争のトラウマにより、多くの人々が心理的サポートを必要としていました。

そのなかで、ロジャーズは、人が自己を理解し、他者と良い関係を築くためには、安心して自己表現できる場が必要だと考えました。
その考えに基づき生み出されたのが、『来談者(クライエント)中心療法』と呼ばれる『心理療法』になります。

来談者(クライエント)中心療法では、クライエントの自己成長を促すために、カウンセラーが『共感的理解』、『無条件の肯定的関心』、『自己一致』を持って接することを重視します。
このアプローチを発展させ、グループの中に適用したものがエンカウンターグループになります。

エンカウンターグループの主な目的は、参加者が真実の自分を見つけ出し、自己成長していくこと、他者との新しい出会いや深いコミュニケーションを通じて、心理的サポートや癒しを得ることになります。
そのため、エンカウンターグループでは、参加者がお互いを深く理解し合い、感情や考えを自由に表現することが重視されます。

エンカウンターグループは、10~12名の参加者と1~2名の『ファシリテーター』から構成されます。
ファシリテーターは、グループの進行をサポートし、参加者が自由に自己表現できる環境を整える役割を担います。

セッションは3時間程度で、1日に複数回行われることが多く、長期的なプログラムでは1か月、短期間の合宿形式では5泊6日などの設定もあります。
日常生活から離れた静かな場所で行われることが多く、これにより参加者はリラックスして自分と向き合うことができます。

また、エンカウンターグループでは、ファシリテーターがセッションを見守りながらも、内容は基本的に自由です。
参加者が自発的に話題を提起し、それに基づいてディスカッションや自己表現が行われます。
ファシリテーターは、グループがより深いレベルでの交流を促進するようにサポートしつつ、参加者の率直な感情や意見が表現される場を作り出します。

エンカウンターグループと、他の集団療法では以下のような違いがあります。

一般的な集団療法では、特定の心理的問題や行動上の問題に焦点を当て、セラピストが治療目標に向けて指導を行う場合が多くあります。
例えば、『うつ病』や『不安障害』、『依存症』などの症状の軽減を目指したプログラムが多く、そこでは治療的な技法(例えば、『精神分析』や『認知行動療法』など)が用いられます。

これに対して、エンカウンターグループでは特定の問題に焦点を当てるのではなく、自己表現や率直なコミュニケーションを通じて、自己発見や自己成長を目指します。
ファシリテーターは参加者を導くのではなく、あくまで進行を支える役割に徹し、自由な交流を促します。

ファシリテーター

ファシリテーターとは、グループ活動や進行を円滑に進める役割を持つ人のことを指します。
参加者が自由に意見を言いやすい雰囲気を作り、話し合いがスムーズに行えるようサポートします。

具体的には、話題を整理したり、時間を管理したり、全員が参加できるように促したりします。
ファシリテーターは、参加者の意見や感情を尊重しながら、グループの目標達成を助ける大切な役割を果たします。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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