ジェンドリン(Eugene Tovio Gendlin)

ジェンドリン

"ジェンドリン(Gendlin, E. T.)"は、1926年から2017年まで活躍したアメリカの哲学者、心理学者です。
フォーカシング』の創始者としても知られています。

ジェンドリンは、"ロジャーズ(Rogers, C. R.)"の指導のもと心理学を学びました。
ロジャーズは、『来談者(クライエント)中心療法』や『人間性心理学』の創始者として知られており、ジェンドリンもその流れを受け継ぎました。

1955年にジェンドリンは『体験過程』といった著書を発表しました。
この著書は、来談者(クライエント)中心療法を発展させる上で重要な役割を果たしました。

体験過程とは、人が自分の感情や体験をどのように感じ、理解するかに焦点を当てた概念です。
ジェンドリンは、感情や体験が単なる頭の中の考えではなく、身体的な感覚としても感じられることを強調しました。

たとえば、何か不安を感じているとき、それがただ不安だと頭で考えるだけではなく、胸がドキドキしたり、お腹が重く感じたりすることがあります。
ジェンドリンは、こうしたはっきりと言葉にはならないけれど、体でなんとなく感じる感覚を『フェルト・センス(felt sense)』と呼び、重視しました。

フェルト・センスは、体が感じている、まだ言葉になっていない(前概念的な)感覚です。
例えば、ある出来事があったとき、具体的に何が不安なのか、何が気になるのかははっきりしなくても、体が反応しているのを感じることがあります。
このようなとき、体の感覚に耳を傾けることで、頭の中の考えだけでは気づけなかった自分の本当の気持ちや問題の根っこに気づくことができます。

ジェンドリンは、このフェルト・センスを丁寧に感じ取り、それを言葉にしていくプロセスが、『心理療法』の効果を高める鍵になると考えました。
それにより生み出されたのがフォーカシングになります。

フォーカシングは、クライエントが、自分の中にあるモヤモヤや不安、気になる気持ちを、体の感覚を通して見つけ出し、それを言葉にして理解しようとする心理療法です。

この方法を使うことで、問題がはっきりしていなかったり、解決策が見つからなかったりする場合でも、自分の中に隠れている答えを見つけやすくなります。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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