フォーカシング(focusing)
フォーカシング
『フォーカシング』は、1960年代に"ジェンドリン(Gendlin, E. T.)"により提唱された『心理療法』になります。
フォーカシングとは、自分の体が感じている曖昧な感覚に注意を向け、それを丁寧に感じ取り、言葉にしていくことで、自己理解を深めていく方法です。
人は生活していく中でストレスや不安、モヤモヤした気持ちを感じることがありますが、その感情の正体がはっきりしないことが多くあります。
例えば、何となく落ち着かないと感じても、具体的に何が原因なのかが分からないことがあります。
フォーカシングでは、そういった何となく感じる体の感覚や何か気になるけど言葉にできない感覚に注意を向けます。
ジェンドリンは、このような何かを感じているけれど、まだそれをうまく言葉にできていない(前概念的な)状態を『フェルト・センス(felt sense)』と呼びました。
そして、このフェルト・センスを丁寧に感じ取り、それを言葉にしていくプロセスにより、人は頭の中の考えだけでは気づけなかった自分の本当の気持ちや問題の根っこに気づくことができると考えました(『体験過程理論』)。
それにより生み出されたのがフォーカシングになります。。
フォーカシングは、様々な方法で行われていますが、主に以下のような6つのステップから成り立っています。
- 間をおく
- リラックスして、心を落ち着けます。
そして、最近気になっていることや悩んでいることを自分に優しく問いかけます。
そして浮かんでくる事柄を適度な距離感で感じます。
- リラックスして、心を落ち着けます。
- フェルト・センス
- 頭の中で考えるだけでなく、身体に生じている何かを感じます。
たとえば、胸のあたりが重い感じ、胃がキリキリする感じなど、はっきりしないけれど身体で感じることを意識します。
- 頭の中で考えるだけでなく、身体に生じている何かを感じます。
- 見出しをつける
- 感じ取った身体の感覚にぴったりくる言葉やイメージ(『ハンドル(handle)』)を探します。
例えば、「重たい感じ」や「モヤモヤした感覚」といったシンプルな言葉でもかまいません。
- 感じ取った身体の感覚にぴったりくる言葉やイメージ(『ハンドル(handle)』)を探します。
- 共鳴
- 見出した言葉が自分の感覚にしっくりくるかどうか、身体に響かせてみます。
もし合わないと感じたら、別の言葉を探してみます。
- 見出した言葉が自分の感覚にしっくりくるかどうか、身体に響かせてみます。
- 問いかける
- まだはっきりしない部分について、もっと理解するために自分に問いかけます。
この感覚はどのような感じだろう?といった具合です。
- まだはっきりしない部分について、もっと理解するために自分に問いかけます。
- 受容
- 新たに気づいたことや、しっくりきた感覚を素直に受け入れます。
フォーカシングでは、このような過程を通ることで、隠れていた感情や悩みの根本を発見することができたり、心の中にあるストレスが解放されリラックスしやすくなる場合があります。
このような体験は、『フェルト・シフト(felt shift)』と呼ばれており、フォーカシングを行った際に体験する、心や体がほっとする瞬間を表します。
- フェルト・センス
フェルト・センスとは、体の中に感じる、まだはっきりと言葉にはできない曖昧な感覚のことを指します。
例えば、何か不安を感じているけれど、その理由がはっきりしないときに、胸の中にモヤモヤした感覚がある場合、それがフェルト・センスになります。
- ハンドル
ハンドルとは、フェルト・センスにぴったりくる言葉やイメージのことを指します。
フェルト・センスを表現するための「手がかり」となるもので、例えば「重たい」「しっくりこない感じ」といった表現がそれにあたります。
- フェルト・シフト
フェルト・シフトとは、フェルト・センスにしっくりくるハンドルが見つかったときに、体が軽くなったり、気持ちがスッキリしたりする変化のことを指します。
自分の感情や問題が少し整理されたように感じる瞬間を指します。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。