フロイトの理論を簡単に解説~part1【臨床心理学】
こんにちは~。
オンラインカウンセリングおはぎの上岡晶です。
臨床心理士・公認心理師の私がジークムント・フロイトの理論についてゆるく、簡単に解説したいと思います。
フロイトとは?
ジークムント・フロイト(Freud, Sigmund.)は1856年から1939年に活躍した精神科医です。
チェコで生まれ、オーストリアのウィーンの大学を卒業し、精神科医となります。
彼は次第に神経症(ストレスなどの影響により、精神が不調となり症状が出る病気)について関心を持ち始めます。
フロイトが凄すぎるのは、フロイトが生きていた当時は、現在のように薬物による治療などはなく、どのように精神の病を理解していいのかということがほとんど分かっていない状態でした。
しかし、フロイトの功績により、先ほどあげた神経症というものがどうして起こるのか、そしてそれで苦しむ方々がどのようにしたら健康に日々を過ごせるようになるのかということが少しずつ理解されはじめ、治療にも生かされるようになりました。
フロイトの理論には、さまざまな批判もあり、今後技術の発展により否定される可能性もありますが、19世紀以降の、精神の病をどのように理解するかという理論や、病をどのように治すかという治療法の発展に大きく貢献しています。
また、フロイトの弟子や、その考えを受け継ぐ人々によって、精神の病への理解や治療に関する数多くの理論が生み出されていき、現在でも様々な人々によって日々検証されています。
素直に皆さん格好良すぎます。
精神分析とは?に入る前に
この説明に入る前に、少し想像していただきたいのですが、先ほど、フロイトは神経症について理解しようとしたと書きましたが、その中でも特にヒステリー(現在では転換性障害)と言われる症状について理解しようとしました。
それは例えば、体のけがや病気がないのに、「突然声が出なくなった」「足に力が入らなくなった。」などの症状です。
自分がそうなった場合や、その症状を持つ方が自分のもとに来て相談してくださった場合に、どのように関わりますか?
おそらくパニックになると思います。
「どう理解していいかわからない」し、「どう力を貸していいのかわからない」状態になるのではないかと思います。
そういったときにフロイトの理論や、精神医学、臨床心理学、その他にも様々な学問や理論が助けになってくれます。
このように心理学を勉強する上では、『どのような場面で役に立つのか』『実際の場面ではどのような困難があるのか』『この知識を使うとどのように自分や相手のため、周囲や世界のためになるのか』ということを想像しながら勉強をすると、腑に落ちたり、理解しやすかったりします。
すいません前置きが長くなりました。
精神分析とは?
精神分析(Psychoanalysis)とは、神経症の理解と治療のために、フロイトが生み出した理論です。
精神分析には様々な考えや言葉があり、混乱すると思いますが、前提として、目の前にいる、精神の病で苦しむ方をどう理解し、どのようにその状態を解消するかを目的としております。
フロイトがどのように精神分析を生み出すに至ったか。
フロイトは、1885年あたりにシャルコー(Charcot)という方に出会います。
このシャルコーという方は、催眠を用いて神経症の治療を実践していた方で、催眠によってヒステリー症状と似た状態を作りだしたり、それを消失させたりすることが可能でした。
それを見たフロイトは、これまで不可解であったヒステリーの症状が起こる要因には、心の働きが影響しているのではないかと考え始めます。
また、フロイトはウィーンのブロイアー(Breuer, J.)という方の、アンナ・Oという患者さんの症例について耳にします。
ブロイアーの催眠を受けている最中のアンナ・Oさんが、普段は忘れていて思い出せないでいた「症状が出てきたときの状況」を思い出して言葉にすると、症状が出てこなくなったというものです。
この事実を知ったフロイトは、神経症の症状には、思い出せない苦痛なことが関わっており、神経症の治療には、その思い出せない苦痛なこと(無意識内容)を認識する(意識化)することが関係しているのではないかと考えます。
しかし、そのまま症状が完全に良くなっていったかというとそうではなく、治療者の影響力が薄れると症状が再びみられるようになりました。
そういった不可解な事態を理解し、効果的な治療を提供するために、『転移』や『抵抗』と呼ばれる概念が生み出されていきました。
また、催眠は一時的で部分的な効果しか上げることができないのではないかと考え、『前額法』や、『自由連想法』などの新たな治療法も生み出されていきました。
(あとでまた説明します~)
精神分析の理論
ここからすごいややこしいです。
「え?」となることばっかりです~。
ほんとすごくゆるめに説明します~
途中で私が質問した内容を覚えていますか?
体のけがや病気がないのに、「突然声が出なくなった」「足に力が入らなくなった。」などの症状を目の当たりにしたらどうしますか?ということです。
先ほどのシャルコーやブロイアーの話を聞くと、何か浮かびますか?
私は難しすぎてほんとにわからなくなります。
何かピンと来る方がいたら本当に尊敬します。
では、フロイトはどのように考えた方というと、神経症の症状には、どうやら心の働きが関係しているかもしれない、そして治療には催眠が効くのかもしれないとなったみたいです。
そうなると、では、“心とはなんだ?”、“催眠って一体どうなってんだ?”となります。
その目に見えない部分を研究し理解しようと試みた結果、様々な概念が生み出され、精神分析という理論が作られることになります。
フロイトが考えた心とは?
そのため、まずは“心とは何だ?どのようになっているんだ?”という部分です。
人の心はどうなっているんだ?という疑問は現在も解明されていません。
しかし、フロイトは様々な研究や診療を行う中でこのように考えました。
フロイトが生きていた当時は特に心と言えば、『意識』(自分や周囲の今の状態を認識できている状態)についてしか考えられておらず、フロイトによってはじめて『無意識』という概念が示されました。
世間では、『意識』の問題がピックアップされますが、実は見えないだけで、『無意識』というすごく大きなものがあり、それが人の生活や行動に影響を与えているのではないか。
と考えました。
そして、神経症の状態もその無意識というものがすごく関わっているんじゃないかと考えました。
心をどのように理解するかは人によって様々ですが、フロイトの理解の仕方は、『(心的)局所論』と名付けられました。
しかし、『局所論』は第一次世界大戦の影響で神経症が生じる方々を説明するには十分ではなかったため、そののちに『(心的)構造論』へと発展していきます。
『局所論』
フロイトは心を3つの領域に分けて理解しようとしました。
『意識』
自分で考えたり、感じていることに気づいていること、自分や周囲の状態がわかっている状態。
『前意識』
普段は意識していないが、思いだそうとおもえば思い出せる領域のこと。
『無意識』
自分が知らない心の奥深くにある層。
つまり、フロイトの『局所論』では意識と無意識の関係から、心や神経症を理解し、治療を試みました。
『抑圧』
フロイトは、心の働きとして『抑圧』というものがあるのではないかと考えました。
それは、人が認識(意識化)するにはあまりに苦痛な体験や記憶は、意識から排除され、無意識の領域に追いやられるというものです。
これは心を守るために、その人に気づかれないうちに行われるものであると考えました。
しかし、抑圧された苦痛な体験や記憶は思い出せないからと言って消えたわけではなく、意識に出てこようとします。
そのため、心はそれを抑え続けねばならず、疲労していきます。
また、抑えきれないものが、別の形になって現れることがあり、それが『夢』や『失錯行為』、神経症ではないかと考え、分析しました。
『夢の理論』
フロイトは、夢について、「欲望の充足である」と考えました。
それはどういうことかというと、夢にはその人が気づいていない欲求や欲望を満たしてくれる機能があると考えました。
しかし、実際見る夢はよくわからないことが多く、とてもそのようには感じられません。
そのような状態についてフロイトは以下のように考えました。
先ほど、無意識には、意識化するにはあまりに苦痛な体験が抑圧されて存在しているのではないかと書きました。
なので、本人が気づいていない欲望(無意識内容)がそのまま夢に出てきてしまうと心にとってとても危険になってしまいます。
そのため、心の働きとして、無意識内容が夢に出てきていいかダメかを『検閲』(調べて)し、心にダメージとならないように、夢に出てくる内容が歪曲(作り変えられて)されることがあるのではないかと考えました。
こういった、夢の分析から、『局所論』といった、人間の心を3つの領域に分けて考えることに至りました。
『失錯行為』
言い間違いや、読み間違いなど、思いがけない言動のこと。うっかりしてしまうことに無意識が影響していると考えました。
これ初め見たとき感動しました。
ぱっと出てきた言葉に、その人の裏のメッセージを読み取れたり、本当はこうしたいんやろなと思う時があります。
ただ、これをすべてに当てはめすぎると危険で、邪推になってしまう気がします。
精神分析ではどのように神経症で苦しむ人を治療しようとした?
神経症の発生には、苦痛な体験が無意識の領域に抑圧されていることが影響している可能性があることについて書きました。
そのため、『局所論』では、無意識の領域にあるものや、その特徴が何なのかを明らかにすることが治療に繋がると考えました。
そして、フロイトは、治療には、無意識に抑圧された苦痛な体験を意識化し思い出すことにより可能なのではないかと考えました。
治療法として催眠が有効であったことから、その技法が使われましたが、催眠にかからない人も中にはいました。
そのため、フロイトは『前額法』と呼ばれる方法を生み出し、また、前額法の欠点を補う形で『自由連想法』へと発展していきます。
『前額法』
治療者が患者の額に手を当てて、過去の外傷体験(苦痛な体験)を思い出すように促す方法です。
『前額法』は過去の外傷体験を思い出すこと、言葉にすることを強いる側面が強く、患者さんの中には、自分のペースで自由に思い返すことを願う方がいたそうです。
そういった意見も踏まえ試行錯誤の末に生み出されたのが『自由連想法』です。
『自由連想法』
患者はカウチと言われる寝椅子(ソファーのようなもの)に仰向けで寝ころび自由連想をし、治療者は患者から見えないところに座って患者の話を聞くというもの。
自由連想とは、「頭に浮かんでいることは何でもそのまま、たとえばどんなにつまらないことでも、恥ずかしいことでも、不愉快なことでも、話してみてください」
という教示のもと、患者は思いつくことをそのまま話すというものです。
この自由連想を行うと、本人は気づいていない無意識にある苦痛な体験が、ポっと言葉に出てくることがあります。
それを治療者は受け取り、本人の心がしんどくならない範囲で伝え返します。
そういう過程を通して、患者は抑圧された記憶を安全な形で時間をかけて思い出していけるようになり、症状の消失に繋がるとされました。
しかし、この治療は一朝一夕には進まず、困難な場面に出くわすことが多くありました。
なぜなら、心が苦痛な体験を無意識に抑圧するのは、心を守るためです。
なので、無理に思い出そうとすると、心が危険にさらされます。
こういった患者さんの心情を理解しつつ、治療が効果的に続けられるような工夫も生み出されていきました。
『抵抗』『転移』『逆転移』とは?
『抵抗』
先ほども書かせていただきましたが、無意識にある内容は、思い出そうとすると心に危険が及びます。
そのため、その危険を避けるために、思い出すのを避けたりして心を守ろうとします。
これを『抵抗』と言います。
これはそうですよね。
抵抗しますよね。
治療において、それは『治療抵抗』や『行動化(アクティング・アウト)』という形で現れることもあります。
『治療抵抗』
治療中にセラピストの指示を聞かなかったり、真逆の行動をとったり、治療の進行を妨げようと反応することがあります。
また、面接への遅刻やキャンセルなどの無自覚の行動として現れることもあり、これを『行動化(アクティング・アウト)』と呼ぶときがあります。
『行動化』は本人の自覚なしに行われます。
『転移』
近しい関係の人に脈絡もなく、不安がられたり、怒られたりしたことはありませんか?
これは本当に不可解で、もちろん理由は様々かもしれませんが、この『転移』の考え方が役に立つときがあります。
フロイトは、患者が過去に体験した感情や対人関係のパターンが、治療者と患者との間で現れてくると考え、これを『転移』と呼びました。
つまり、過去の重要な人に向けての心情や態度を、別の人にも向けて行っている状態という理解です。
例えば、上司にちょっとした注意を受け、必要以上に心臓がドキドキすることがあったとします。
思い返してみると、上司と似た学校の先生に昔皆の前であり得ないぐらい怒鳴りつづけられ怖かったなどの経験があったとします。
これを『転移』の文脈で考えてみると、学校の先生に感じた心情や脅えるという態度を、今の上司にも知らずのうちに適用してしまっていると理解できるかもしれません。
しかし、この例を見てわかる通り、これを改善するのにはすごく難しい側面があります。
フロイトは、はじめは『転移』を治療を阻害するものと考えましたが、徐々に患者の無意識を理解するのに最大の手がかりになると理解するようになりました。
『陽性転移』
患者が治療者に対して、信頼や敬意、愛情の感情を持ち、近づこうとする転移。
『陰性転移』
患者が治療者に対して、否定的で拒否的な感情を持ち、回避しようとする転移。
フロイトは自由連想法を行いながら、治療中に生じてくる『抵抗』や『転移』を理解(『解釈』)することで、患者の無意識に抑圧された苦痛な体験を明らかにし、患者が受け入れられる範囲で伝え返していきました。
しかし、治療が困難になる要因は患者さん側だけにあるわけではありません。
それは治療者も完璧な人間ではないので、葛藤やコンプレックスを持っていることがほとんどなためです。
それが治療に現れることを『逆転移』と呼びました。
『逆転移』
『転移』が、治療者に対して引き起こされる患者側の感情反応(治療者←患者)なのに対し、『逆転移』は、患者に対して引き起こされる治療者側の感情反応(治療者→患者)になります。
これは自分と同じような状態の患者を自分の問題と重ね合わせて必要以上に同調したり、反対に問題に触れることを避けてしまうなどの形として現れます。
『逆転移』は、治療の妨げになる一方で、深い共感性を生み出す可能性もあります。
そのため、フロイトは治療者は『教育分析』を受け、自分と患者の双方を冷静に観察できるようにならなければならないと考えました。
また、絶えず自己分析を行い、治療者が自分自身を把握するよう努めなければならないとしました。
ごめんなさい。
すごく疲れてしまいました。
続きはまた今度書きたいと思います~。
すいません。それでは失礼いたします。では~