フロイトの理論を簡単に解説~part2【臨床心理学】

ごめんなさい。
こんにちは~。臨床心理士・公認心理師の上岡晶です。

前回、フロイトの理論の説明の途中で力尽きてしまい大変申し訳ありません。
前回は、“フロイトがどのような経緯で精神分析を生み出すに至ったか”といったことや、“神経症で苦しむ方々をどのように理解し、治療しようとしたか”といった部分について書かせていただきました。

前回の記事では、『(心的)局所論』や『抵抗』『転移』などについて触れました。
次に、『局所論』から発展した『(心的)構造論』や『心理性的発達理論』について書きたいのですが、その前に、その二つの概念を理解するために必要不可欠な『誘惑論』や『欲動論』、『エディプス・コンプレックス』などの概念について書きたいと思います

前回の記事はこちらをご参照ください。
フロイトの理論を簡単に解説~part1【臨床心理学】

それでは書いていきます~。

簡単なおさらい。

前回の記事で、精神分析について以下のように書きました。

精神分析(psychanalysis)は、神経症(ストレスなどの影響により、精神が不調となり症状が出る病気)の理解と治療のために、フロイトが生み出した理論であること。

神経症には、催眠が有効であり、特に催眠中に、思い出せないでいた発症に関わる苦痛な体験を思い出すと症状が消失することがあったこと。
ただ、催眠の効果は一時的で、催眠にかからない人には治療できなかったこと。

フロイトが生きていた当時は、なぜ神経症が起こるのかは不明でしたが、催眠が有効なことからフロイトは「もしかすると心の要因が神経症の発症に関わっているのではないか」と考えました。

そして、フロイトは“そもそも心とはなんだ?”、“催眠に代わる有効な方法はなんだ?”について、実践と研究を繰り返し、様々な理論や概念を生み出していきました。

  • 心はどのようになっているのか」については、『(心的)局所論
  • 神経症の発症には、どのような心の働きが関わっているんだ」には、『抑圧』などの『防衛機制』と呼ばれる考え(防衛機制はまた出てくると思います~)。
  • 神経症の治療」には、『自由連想法
  • 治療中に起こる困難とそれを乗り越えるための概念」は『抵抗』や『転移』など

の言葉でゆるめに簡単に解説しました。

難しいですね~。
そこで、今回はまず、神経症の発症に関わる部分についてもう少し書いてみたいと思います。

無意識に抑圧されている苦痛な「体験や記憶」って、一体どういう「体験や記憶」のこと?

フロイトは、人の心には、『意識』・『前意識』・『無意識』という3つの領域があると仮定しました(『局所論』)。
そして、意識(認識)するにはあまりに苦痛な体験や記憶は、思い出せないように無意識の領域に追いやられることがあると考えました(『抑圧』)。

ただ、その無意識に追いやられたものはなくならず、意識の領域に上ってこようとします。
それが形を変え、神経症の症状として現れると考えました。

ここまで、聞くと、「そうなんや?」「そういうこともあるんや~」となりませんか?
でも、よくよく考えてみると、あまり良く分かりません。
なぜなら、無意識も意識も、心も目に見えないからです。
んで、「苦痛な体験や記憶ってなに?」となります。

フロイトの理論や臨床心理学に関する様々な理論は、突然ひらめいたのではなく、目の前にいる精神の病で苦しむ方々との関わりの中で生まれました

なので、実際に自分が関わる相手を想像したり、自分に置き換えて考えてみたり、自分ならどうするか、どう理解するかを念頭にして、「あーではないか」、「こーではないか」と思いながら知ろうとすると少し勉強が楽しくなるかもしれません

ごめんなさい余談が長くなりました。

『誘惑理論』もしくは『外傷理論』

フロイトが患者の治療を行う中で、患者が語る過去の苦痛な体験について数多く耳にします。
その中で、多く語られたこととして、「幼少のころに近しい関係の人から性的な誘惑を受けた記憶がある」というものでした。
神経症の患者の割合は女性が高く、近しい人間として語られるのは父親であることがほとんどでした。

そのため、初期のフロイトは、神経症の発生には、

  • 子どもの時に体験した性的な外傷体験(トラウマになるような衝撃的な出来事)が影響しているのではないか。
  • そしてその性的な外傷体験とは、患者の多くが語る「父親からの性的な誘惑」が関係しているのではないか。

と考えました。

上記のような考えから、この考えを、『誘惑理論』もしくは『外傷理論』と言いました。
『誘惑理論』や『外傷理論』は『エディプス・コンプレックス』の発見を経て、『欲動理論』へと発展していきます。

『エディプス・コンプレックス』

また、ここで考えていただきたいのですが、先ほどの『誘惑理論』や『外傷理論』についてどう思います?
「なるほど~」となる方もいれば、「なにか違和感が…」となる方もいらっしゃるかもしれません。
僕はこれを聞いた時、「へぇ~、そうなんやぁ~」ぐらいで流してしまいました。

『エディプス・コンプレックス』という考えがどうして生まれたのか?

フロイトは、ここで疑問を持ちました。
多くの患者が神経症で苦しんでいるが、その父親すべてが、性的な倒錯者(本来と正反対のこと)なのか?」と。

またフロイト自身も、神経症の病で苦しんでいる人の一人であったことから自分の父親について考えみたそうです。
しかし、いくら考えてみても、自分の父親が自分を性的に誘惑する人であるとは考えられないとなりました。

そこでフロイトは、神経症で苦しんでいる自分が自分自身の分析してみれば、『誘惑理論』が正しいかどうか確かめられるのではないかとなりました。
そして、フロイトは、自分自身の夢について分析を行います

フロイトは、自分自身の夢を分析していく中で、自分は「母親に惚れ込んでいること」、そして「父親への嫉妬を感じている」ことに気づきます。
そして、この無意識にある「母親への性愛」と「父親への嫉妬」といった葛藤が解消されないことが神経症の発症に関わっているのではないかと考え始めます。

そして、それを『エディプス・コンプレックス』と名付けました。

すいません。
話が急に進みましたね。
正直この理論を私はあまり理解できません。
ただ、フロイトはこの『エディプス・コンプレックス』の概念を中心に起き、神経症の発生理由を理解しようと試みました

どうして『エディプス・コンプレックス』という名前になったか

エディプス・コンプレックス』の名前の由来は、ギリシャ神話の「オイディプス王」の物語となっております。

オイディプス王の物語は、フロイトが自身の夢分析を行う中で感じた「母親への性愛」と「父親への嫉妬」を巡る物語であることから、この名前が付けられました

オイディプス王の物語とは

オチを先に言いますと、オイディプス王は父親を殺し母親と結婚します。
ごめんなさい笑。嫌な人は上の文章読み飛ばしてください。
すでに見てしまっていたらすいません。

ある場所に、ライオスと呼ばれる王様と、その妻のイオカステがおりました。
二人の間に子供(男児)が生まれますが、神のお告げで「ライオス王は自分の子供に殺される運命にある」と予言を受けます。

それに脅えたライオス王は、その子供を家来に命じて殺すように指示します。
しかし、家来は不憫になり、子供を別の人に預けます。

そして、最終的にその子供は隣国のポリュボス王とその妻のペリボイアの養子として迎えられることになります。
その子供は、オイディプスと名付けられました。

そして、オイディプスは、ポリュボス王とペリボイアを実の両親だと思い育ちます。
しかし、たくましい青年へと成長したオイディプスにある日神のお告げがきます。

それは「あなたは、故郷に帰ってはいけません。父を殺し、母と交わる(結婚する)ことになる」と予言を受けます。
その予言は信じられないものの、オイディプスはポリュボス王とペリボイアを実の両親だと思っていたため、二人に危険があってはいけないと思い、二人のもとへは戻らず、放浪の旅へでます。

放浪の旅に出ていたオイディプスはある一団と出会います。
その一団と揉めることになり、オイディプスはその一人を殺めてしまうことになります。

実はオイディプスと揉めたその一団の中には、実の父親であるライオス王がおり、オイディプスが殺めてしまったのはそのライオス王でした。
オイディプスは気づかないうちに、神に告げられた通り「父親を殺す」ことになりました。

そしてその後、オイディプスはある国にたどりつき、その国を襲っていたスフィンクスという怪物を退治することになります。

そして、オイディプスは怪物を倒し国を救った功績が認められ、その国の未亡人の王妃と結婚することになります。
その未亡人の王妃が、実の母親であるイオカステだったのです。
またオイディプスが気づかないうちに、神の予言通りのことが起こってしまいます。

そして、時は過ぎ、ある時オイディプス王がいる国に災いがおきます。
そこで、オイディプス王はその災いをどうにかしようと、神のお告げを求めます。

すると、神より「この災いは、前の王であるライオス王を殺した者を、処罰していないことが原因だ」と言われます。
オイディプス王は、もちろん自分が父親であるライオス王を殺したこと、そして結婚したイオカステが自分の母親であることを知りません。
そして、イオカステもまたライオス王を殺したのがオイディプス王であること、そして自分が結婚したのが実の息子であることに気づいていません。

二人は必死に犯人をさがします。
しかし、犯人を捜していくうちに二人は、「オイディプスはライオス王とイオカステの間に生まれた子供であること」、そして「オイディプス王が父であるライオス王を殺害したこと」に気づいていきます。

そして、先に真実を知り絶望したイオカステは自分で命を絶ってしまいます。

事実を知り絶望したオイディプス王は、罪悪感から自分の目を刺し、国を去ることになりました。

『エディプス・コンプレックス』とは?『誘惑理論』から『欲動理論へ』

すいません。
本題に入るまでにだいぶ時間がかかりました。

初期のフロイトは、神経症の患者が、「父親からの性的な誘惑」について語ることが多くあったことから『誘惑理論』を考えました。
しかし、フロイトが自身の夢分析を行った結果、自身の無意識にある「母親への性愛」と「父親への嫉妬」の葛藤を知りました。

そうしたことから、神経症の発症には、子供のころに両親から性的に誘惑された外傷体験が関わっているのではなく、反対に子ども側が両親に性的な欲望を抱いていることが関わっているのではないかと考えます。

そして、そういった願望や葛藤は、本人には受け入れがたいため、偽造して記憶されているのではないかと考えました。

これにより、『誘惑理論』(親→子供)から『欲動理論』(親←子供)へと発展していきます。

『エディプス・コンプレックス』とは?

ごめんなさい。
そろそろいい加減に『エディプス・コンプレックス』について書きます。

のちほど書きますが、『心理性的発達理論』の『男根期』に『エディプス・コンプレックス』は生じるとされています。

男根は男性器のことです。
それがあるないによって、心の発達の過程は異なるとされました。

男根のある男児の場合を『エディプス・コンプレックス
男根のない女児の場合を『エレクトラ・コンプレックス

という言葉で分けて理解しようとしました。

『エディプス・コンプレックス』

男児の男根は、女性への欲望が生まれる源となりますが、それは初め母親への性的な欲望として現れると考えました。
しかし、母親を愛そうと思うにも、そのポジションにはすでに父親という存在がいます。
そのため、男児は次第に、父親を憎むようになります。

しかし、ここで現実に直面します。

  • 父親は自分よりも強いこと。
  • 母親は父親を愛していること。
  • そして、自分もまた育ててくれる父親を愛していること。

ここで、男児はびっくりするぐらい葛藤します。

  • 父親を憎む一方、父親に敵意を持ち続けると、父親から仕返し(報復)を受けるのではないかという不安(『去勢不安』)。
  • 母親と父親を愛する気持ち。
  • ただ、現実に直面し、母親への性的な欲望を諦めざるを得ない苦しさ。

『エディプス・コンプレックス』はどのように克服される?

この葛藤の克服は二つの道があるとされています。

陽性のエディプス・コンプレックス

この道は、男児が父親に同一化することで達成されるとされます。
男児は、父親への憎しみを抑え、愛し憧れている父親と同じような存在となろうとします。

これにより、男性性や健全な『超自我』が形成されるとしました。
(『超自我』はまた出てきます~)

陰性のエディプス・コンプレックス

この道は、反対に母親に同一化することにより生じます。
陰性と書かれているため、あまり心の発達にとって健全とは言い難い状態です。

父親からの仕返しを恐れる『去勢不安』があまりに強いと男児は、父親への競争心や敵意を放棄してしまうようになります。
そして、母親と同じような存在になる(同一化)ことで、父親から愛されようとします。

これにより、男性性や健全な『超自我』が育まれづらくなり、のちの心の発達に問題が生じるとされます。

『エディプス・コンプレックス』が神経症の発症とどう関わってくる?

心理性的発達理論』の『男根期』の時期を過ぎ、『性器期』(思春期頃)になると、男児は身体的な成長・成熟により、再び性的な欲望が出てくると考えました。

『男根期』の時期に陽性のエディプス・コンプレックスを経験した男児の場合は、性的な愛情は母親ではなく、別の異性へ向くようになります。

しかし、陰性のエディプス・コンプレックスを経験した男児の場合、性衝動を巡る葛藤が解消されていないことにより、性的な愛情を別の異性に向けることが難しくなると考えました。

そのような未解決の葛藤が神経症の発症に関わっている可能性があるのではないかと考えるようになりました。

『エレクトラ・コンプレックス』とは?

心理性的発達理論』の『男根期』の女児の葛藤は、男根が自分にないという気づきから始まるとされています。

男根がないことで、女児はそれを与えてくれなかった母親へ憎しみを持つようになります。
そして、男根を持つ父親への憧れが生まれるようになります(『男根羨望』)。

その葛藤の克服は、次第に父親から赤ん坊を与えられたいという願望に変化し、母親を同一化することで成されます。
母親と同じような存在になろうとする過程で、女児は女性性を手に入れていくとされています。

そして、この葛藤が解消されない場合、男児の場合と同様、『性器期』において性的な愛情を別の異性へ向けることができなくなると考えました。
また、女児の場合もこの未解決の葛藤が神経症の発生に関わっている可能性があると考えました

この『エレクトラ・コンプレックス』の名称はフロイトの弟子のユングによりつけられました。

フロイトは『エディプス・コンプレックス』の概念の中で女児の心の発達についても説明しようとしたため、ユングのように別の名称をつけませんでした。
この男根から生じる葛藤についての考え方は、男性中心な考えであるとして他の研究者や実践家から批判もあります。

『エレクトラ・コンプレックス』の名前の由来は?

「エレクトラ」はギリシャ神話に出てくる王女の名前です。
オイディプス王の物語と同様にエレクトラ王女の物語もあります。

また、先にオチを書きますので、いやな人はその部分を呼び飛ばしてください笑。

エレクトラ王女の物語。

オチです。
エレクトラの母親はその愛人と共謀して、父親を殺します。
そして、エレクトラは弟の力を借り、母親へ復讐を果たします。

ある国に、アガメムノンと言われる王様とその妻クリュタイムネストラがいました。
その二人の間に生まれたのが娘であるエレクトラでした。

その国は、ある時から別の国と戦争をはじめました。
それはトロイア戦争と呼ばれる十年にも及ぶ戦争で、アガメムノン王は戦地に赴くため王宮にいないことがほとんどでした。

そんな中、妻のクリュタイムネストラはアイギストスという愛人と恋に落ちます。
二人は二人の関係が発覚するのを恐れ、アガメムノン王の殺害を計画します。

トロイア戦争は勝利に終わり、王宮に帰ってきたアガメムノン王は、クリュタイムネストラはアイギストスの計画通り殺害されていまいます。

また、二人はアガメムノン王を殺害した罪の報復を恐れ、まだ幼い息子であったオレステスを殺めようと計画します。
その計画に気づいたエレクトラは、オレステスを別の場所に預け、守ります。

その後、エレクトラは、クリュタイムネストラとアイギストスより、不遇な待遇を受け続けます。
そういった状況の中、エレクトラは父親であるアガメムノン王のため、二人に復讐することを誓います。

そして時は経ち、弟であるオレステスは成人となりました。
エレクトラは、オレステスと協力し、クリュタイムネストラとアイギストスへの復讐を実行します。

そして、オレステスの手により二人は殺められました。
しかし、実の母親を自らの手で殺めてしまったオレステスは、罪悪感から正気を失い、国を離れていきました。

その後、エレクトラは神々に救いを求めました。
神のたすけにより、オレステスは正気に戻ることが出来ました。

また、神々の審判により、罪を許されたオレステスは、故郷に帰り、その国の王なりました。

ごめんなさい。
またもや力尽きてしまいました~。

Part3で『(心的)構造論』や『心理性的発達理論』について書けたらと思います~。

それでは~。

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