人間性心理学(humanistic psychology)
人間性心理学
『人間性心理学』は1960年から1970年にかけてアメリカで生み出された心理学の新たな潮流です。
"マズロー(Maslow, A. H.)”が創始者の一人として知られています。
心理学の歴史には大きく分けて以下のような4つの勢力が存在すると考えられておりますが、人間性心理学はその第三勢力に当たると考えられています。
- 第一勢力は、『精神分析』
- 第二勢力は、『行動主義心理学』
- 第三勢力は、人間性心理学
- 第四勢力は、『トランスパーソナル心理学』
人間性心理学は、1960年当時主流であった精神分析や行動主義心理学を批判する形で生み出されました。
人間性心理学では以下のような点で精神分析と行動主義心理学を批判しました。
- 精神分析
- 人間は無意的本能によって突きうごかされると考えており、人間を性悪説で捉えるなど、人間の病的で異常な側面に注目している。
- 行動主義心理学
- 人間は刺激と反応の連鎖により機械的、操作的に行動する ものと考えており、人間を機械論的(意志や目的を排除し、因果関係のみで物事を説明しようとする考え方)、物質主義的(精神的なものより物質的なものを第一義とする考え方)に捉えるなど、人間を一つの側面からしか理解できていない。
以上の批判から人間性心理学では、精神分析や行動主義心理学とは異なり、人間の主体性や創造性、『自己実現』などの肯定的側面に注目します。
そして、人間には本来的、生来的に自己実現や成長に向かう欲求 や動機づけがあり、人間はより高次の価値に向かって人間性を開発、伸長していく 存在であると考えます。
このような人間性心理学の考えに基づいた代表的な人物や理論、『心理療法』は以下のようになっております。
心理療法 | 人物 | 特徴 |
---|---|---|
ー | "マズロー(Maslow, A. H.)" | 『人間性心理学』 『欲求階層説』 『自己実現理論』 『トランスパーソナル心理学』 『自己超越』 |
『来談者(クライエント)中心療法』 | "ロジャーズ(Rogers, C. R.)" | 『治療的人格変化の必要十分条件』 『エンカウンター・グループ』 |
『フォーカシング』 | "ジェンドリン(Gendlin, E. T.)" | 『体験過程理論』 『フェルトセンス』 『フェルトシフト』 |
『ゲシュタルト療法』 | "パールズ(Perls, F. S.)" | 『ホット・シート(エンプティ・チェア)』 『ボディーワーク』 『ファンタジートリップ』 『夢のワーク』 『実験』 |
『実存的心理療法』 | "ロロ・メイ(May, R.)" | 『実存心理学』 |
『実存分析(ロゴセラピー)』 | ”フランクル(Frankl, V. E.)” | 『意味への意志』 |
『現存在分析』 | ”ビンスワンガー(Binswanger, L.)” | 『現象学』や哲学上の概念の利用 |
ー | ”レイン(Laing, R. D.)” | 『反精神医学』 |
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。