知能検査（intelligence test）【心理学用語】臨床心理学

知能検査（intelligence test）

『知能検査』とは、精神機能の一つである『知能』について客観的に検査し、表示することを目的として考案された『心理検査』になります。

1800年代後半のフランスでは全員が学校に入学する制度である義務教育が始まりました。
しかし、そこでは先天的な問題により同年齢の子どもに追いつけない子どもの存在が確認されるようになります。

そこで開発されたのが『知能検査』であり、それにより子ども達の発達の程度を量的に測定し、それぞれに合わせた教育を提供することが可能になっていきました。
その世界ではじめての『知能検査』は『ビネー・シモン知能検査』と呼ばれ、1905年に”ビネー（Binet, A.)”とその弟子の”シモン（Simon, T.）”によって作成されました。

『ビネー・シモン知能検査』では、『知能』を表す年齢尺度として『精神年齢（MA：Mental Age）』と呼ばれる概念が組み込まれていました。
しかし、『精神年齢』だけの表示では、個人の位置づけや、実際の年齢である『生活年齢（CA：Chronological Age）』の違う人同士の客観的な比較ができませんでした。

その不備を補うため、”ターマン（Terman, L. M.）”は、”シュテルン（Stern, W.）”の生み出した『知能指数（IQ：Intelligence Quotient）』の概念を実用化し、『スタンフォード・ビネー知能検査』を作成します。

このように、『知能検査』ははじめ、精神遅滞（現在は知的障害）の子どもとそうでない子どもを判別し、知的な発達に遅れのみられる子ども達に特別な支援を行う目的で作成されました。
そのため、『知能』を単一の指標として測定し、知的水準を測定しようとしました。

しかし、それに対し、アメリカの”ウェクスラー（Wechsler, D.）”は、『知能』を単一の能力としてではなく、いくつかの異なる能力の総体として捉えようとしました。
これにより生み出されたのが『ウェクスラー・ベルヴュー成人知能検査』です。

このように、ビネーにより生み出された『ビネー式知能検査』ははじめ、『知能』を単一指標として捉えようとしたのに対し、ウェクスラーにより生み出された『ウェクスラー式知能検査』では、『知能』を複数の能力から捉えようとしました。

日本において、『ビネー式知能検査』は『田中ビネー知能検査』や『鈴木ビネー知能検査』として標準化されています。
また、『ウェクスラー式知能検査』も、成人用の『WAIS』、児童用の『WISC』、幼児用の『WPPSI』などが標準化され使用されています。

『知能検査』は他にも、描画を用いて『知能』の測定を試みる『グッドイナフ人物画知能検査（DAM）』や、戦争時の兵士の配置を検討するために作成された『集団式知能検査（α式検査・β式検査）』、乳幼児の精神機能を多面的に理解するために作成された『発達検査』の発展にも繋がっていきます。