K-ABC(kaufman assessment battery for children)

K-ABC

K-ABC』は、1983年に"アラン・S・カウフマン(Kaufman, A. S.)"と"ナディーン・L・カウフマン(Kaufman, N. L)"の夫妻によって開発された『発達検査』になります。
発達検査は、子どもの発達状況や特性を客観的に評価し、支援の指針を見つけることを目的とした『心理検査』です。

K ABCは、子どもの認知能力や学習特性を多角的に評価することで、子ども一人ひとりの得意分野を見つけ、教育現場で役立つ支援方法を見出すことを目的として設計されました

K-ABCが開発される以前、『知能検査』として広く利用されていたのは『ビネー式知能検査』や『ウェクスラー式知能検査』などでした。
しかし、これらの検査は知能を単一のスコア(『知能指数(IQ)』など)で評価する傾向があり、子どもの個々の特性や学び方を十分に反映できないという課題がありました。
また、言語や文化的要因の影響を受けやすく、多様な背景を持つ子どもたちへの適用に限界がありました。

カウフマン夫妻は、このような課題を解決するため、『認知心理学』や『神経心理学』の理論を基盤とし、新しいアプローチを取り入れました。
特に、アメリカの心理学者”ルリア(Luria, A. R.)”の情報処理や認知処理に関する理論(『ルリア理論』)が基盤となりK-ABCが生み出されていきました。

K-ABCでは、子どもの能力を2つの視点で評価します。
一つは、情報を処理して新しい問題を解決する力を測る「認知処理過程尺度」、もう一つは、数や言語の知識、読解力などの学習の習得度を測る尺度です。

さらに、認知処理過程は「継次処理」と「同時処理」という2つの異なるスタイルから評価されます。
継次処理とは、情報を順序立てて整理しながら処理する力を指し、同時処理は、情報を全体的に捉えて処理する力を指します。
例えば、継次処理では、聞いた数字を順番通りに覚えて言い直したり、文章を一つずつ順序立てて理解したりするような力を指します。
一方、同時処理は、パズルのように形や模様のつながりを見つけたり、図形の配置を全体的に把握して考えたりする力を指します。

この評価方法により、子どもが得意とする認知のスタイルを発見することができます。
そして、これらの結果を活用することで、子どもの強みを最大限に活かした教育プランや支援方法を考えることが可能になります。

K-ABCは、1983年の初版の発表以来、科学的進歩や現場からのフィードバックを反映しながら改訂が重ねられています。

特に、2004年に発表された改訂版(KABC-II)では、『キャッテル・ホーン・キャロル(CHC)理論』を取り入れ、知能の多面的な側面をさらに詳しく測定できるようになりました。
この改訂により、対象年齢も拡大し(2歳6カ月から18歳11カ月)、評価方法や基準もより現代的なものへと改善されました。

このように、K-ABCは、単に知能を測るための検査ではなく、子どもの特性を深く理解し、可能性を最大限に引き出すための重要なツールとして、心理学や教育の現場で広く活用されています。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

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この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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