ラボラトリー・トレーニング(laboratory training)

ラボラトリー・トレーニング

ラボラトリー・トレーニング』は、"レヴィン(Lewin, L.)"が考案した『Tグループ』を発展させた体験学習の手法です。

ラボラトリー・トレーニングとは、体験的な学習を重視したプログラムの一種であり、参加者が実際の体験を通じて自己理解や他者理解を深め、人間関係のスキルを向上させることを目的としています。

ラボラトリー・トレーニングの起源は、1940年代後半にアメリカで発展したTグループというアプローチにさかのぼります。
Tグループは、心理学者のレヴィンが提唱した『グループダイナミクス』の理論を応用したもので、集団での体験を通じて個人の自己理解や他者理解を深めることを目的としています。

Tグループでは、参加者が集まり、互いに自己開示を行いながらフィードバックを交換することで、関係性を深める手法が取られました。
このTグループが持つ、体験学習を通じて人間関係スキルを磨くといった特徴が発展し、より広い学びの場を提供するものとしてラボラトリー・トレーニングという包括的なプログラムが組織されるようになりました。

ラボラトリー・トレーニングはTグループを含む、より包括的なプログラムです。
一般的に、2週間の合宿形式で行われますが、短期の2〜3日間のプログラムや定期的に通う形のプログラムもあります。

そこでは、複数のTグループや体験型ワークショップ、リーダーシップ訓練などが組み合わされ、個人とグループの成長を促す場が提供されます。
Tグループはその中の一環で実施される小グループ活動になります。
Tグループでは、特に自己開示とフィードバックを通じた個人の成長に焦点を当てていますが、ラボラトリー・トレーニングは組織全体での人材育成や課題解決を視野に入れた多面的なプログラムとなっています。

小グループに分かれた参加者は、ディスカッションや、互いの意見の交換をしながら関係性を深めるための演習やワークショップを実施します。
さらに、この体験を振り返り、自分自身や他者の行動、感情に対する理解を学びに変える時間が設けられています。

このような体験と振り返りを通じた繰り返すことにより、内面的な成長や新しい発見を得られると考えられています。

ラボラトリー・トレーニングと他の『集団療法』の違いは、単に知識を得るのではなく、実際の人間関係の中でスキルを体感し、練習する機会を提供する点にあります。
一般的な集団療法では、心理的なサポートや自己探求を主な目的としますが、ラボラトリー・トレーニングでは自己理解だけでなく、他者との信頼関係を築くスキルを自然に身につけることが重視されます。

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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