ライフサイクル論(life cycle)
ライフサイクル論
『ライフサイクル論』は”エリクソン(Erikson, E. H.)”により提唱された概念です。
”フロイト(Freud, S.)”の『心理性的発達理論』では、性愛発達の到達点を『性器期』においていたのに対し、ライフサイクル論では、その後の成人期や老年期における発達も視野にいれています。
また、エリクソンは人の発達は常に社会との相互作用の中で起こると考え、心理社会的な側面を重視しました。
そのため、ライフサイクル論では、心理性的発達理論が重視している生物学的な側面に、心理社会的な視点を加える形で生み出されていきました。
エリクソンは人生の生から死に至る一生を通じて行われる発達を『人生周期(ライフサイクル)』として描きだし、8つの時期に区別して記述しました。
8つの時期にはそれぞれ解決せねばならない『発達課題』とその対極の『心理社会的危機』があると考えました。
また、それぞれの時期にある葛藤を克服することで発達する精神的健康の要素(『人格的活力』)について記述しました。
発達段階 | 発達課題 | 心理社会的危機 | 人格的活力 | |
---|---|---|---|---|
乳児期 | 基本的信頼 | VS | 基本的不信 | 希望 |
幼児前期 | 自律性 | VS | 恥・疑惑 | 意志 |
幼児後期(遊戯期) | 自主性 | VS | 罪悪感 | 目的 |
学童期 | 勤勉性 | VS | 劣等感 | 適格 |
青年期 | 同一性 | VS | 同一性拡散(混乱) | 忠誠 |
成人前期 | 親密性 | VS | 孤立 | 愛 |
成人後期 | 生殖性(世代性) | VS | 停滞 | 世話 |
老年期 | 統合性 | VS | 絶望 | 英知 |
メモ書き:各発達段階の年齢について
ライフサイクルでのおよその年齢について書きますが、それぞれの社会システムや文化、社会情勢によって年齢の幅が異なるため、参考程度にご参照ください。
例えば、青年期の発達課題は、高校卒業までの18歳頃を指す場合がありますが、大学への進学率の上昇に伴い、大学卒業までの22歳頃の時期を指すこともあります。
そのため、時代や社会の変化とともに、年齢の幅も異なってくることがあります。
- 乳児期(0歳~1歳半頃)
- 幼児前期(1歳半~4歳頃)
- 幼児後期(遊戯期)(2歳~5歳頃)
- 学童期(6歳~12歳頃)
- 青年期(12歳~22歳頃)
- 成人前期(22歳~40歳頃)
- 成人後期(40歳~65歳)
- 老年期(65歳以降)
ライフサイクル論における、心理社会的危機の解決とは、各段階で同調的ポテンシャルの全体量が失調的ポテンシャルの全体量を上回ることを指し、失調的ポテンシャルが皆無なることを意味しません。
乳児期の時期を例にすると、危機の解決は基本的不信(失調的ポテンシャル)が全くなくなってしまうことによりなされるのではなく、乳児が基本的信頼(同調的ポテンシャル)と基本的不信のどちらも体験すること、そして、基本的信頼の全体量が、基本的不信の全体量を上回ることによりなされると考えます。
それにより、乳児の中に希望が芽生えてくるとされています。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.
横川滋章・橋爪龍太郎(2015)『生い立ちと業績から学ぶ精神分析入門 22人のフロイトの後継者たち 』 乾 吉佑 (監修), 創元社.
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\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。