マーガレット・マーラー(Margaret Schoenberger Mahler)

マーガレット・マーラー

マーラー(Mahler, M. S.)”は1897年から1985年に活躍した精神分析家の精神科医です。

マーラーはハンガリーに生まれ、小児科医となった後、精神科医となっています。
ヨーロッパでの活動後、第二次世界大戦の影響によりアメリカに移住し活躍します。

マーラーは”フロイト(Freud, S.)”が創始した『精神分析』理論を学びます。
その後、精神分析の中でも”ハルトマン(Hartmann, H)"や”アンナ・フロイト(Freud, A.)”が確立した『自我心理学』の流れを汲む精神分析家となり、理論を発展させていきます。

マーラーは子どもに生じる精神病理について理解しようとし、『共生幼児精神病』の概念を提唱しました。

また、マーラーは共生幼児精神病の研究を行う中で、子どもの心がどのように発達していくのかという正常発達について研究をすることになり『分離ー個体化理論』が生み出されていきました。

共生幼児精神病

マーラーは子供に生じる精神病を『自閉的幼児精神病』と共生幼児精神病の二つに分類して考えました。

自閉的幼児精神病は、”カナー(Kanner, L)”により報告された『早期幼児自閉症』をもとに分類しました。
自閉的幼児精神病では、子どもが養育者や他者との接触を求めず、関係の形成が困難な状態を指します。

共生幼児精神病では、子どもが母親から分離し、心理的な独立(個体化)が生じる2歳から5歳の時期に起こるとし、極度の分離不安や母親との共生状態への『退行』(発達の逆戻り)が生じることを指します。

はじめ早期幼児自閉症は小児の『統合失調症』との違いがはっきりしていませんでした。
しかし、二つは次第に明確に区別されていくことになり、早期幼児自閉症は現在の『自閉スペクトラム症』へと発展していきます。

分離ー個体化理論

新生児が母親との共生状態(共にいる状態)からどのように自己と他者を区別していくかの理論になります。

分離ー個体化理論では、子どもの正常発達を『正常な自閉期』『正常な共生期』『分化期』『練習期』『再接近期』『個体化の確立と対象恒常性のはじまり』の6つの時期に分類しました。

そして、前の2つを対象関係成立以前の段階、後の4つを分離ー個体化過程と呼び、この過程を経て自他の区別が始まり、子どもの心の中に安定した他者の像が内在化(外界のものを取入れて自己のものにしていくこと)されていくと考えました。

  • 対象関係成立以前の段階
    • 正常な自閉期
    • 正常な共生期
  • 分離ー個体化過程
    • 分化期
    • 練習期
    • 再接近期
    • 個体化の確立と対象恒常性のはじまり

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

横川滋章・橋爪龍太郎(2015)『生い立ちと業績から学ぶ精神分析入門  22人のフロイトの後継者たち 』 乾 吉佑 (監修), 創元社.

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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