バリント(Michael Balint)

バリント

バリント(Balint, M.)”は、1896年から1970年にイギリスで活躍したハンガリー人の精神科医になります。
対象関係論』の流れを汲む精神分析家の一人です(『独立学派(中間学派)』)。

バリントは、1896年にハンガリーのブタペストで生まれます。
大学では医学を学び、1919年に大学で開設された精神分析講座を聴講し、『精神分析』に興味を持つようになります。

卒業後、精神科医となったバリントは、ベルリンでの研修を経て、著名な精神分析家である”フェレンツィ(Ferenczi, S.)"に師事します。
フェレンツィは、治療者(セラピスト)と患者(クライエント)の関係性を重視する精神分析家であり、バリントもフェレンツィの考えから多大な影響を受けます。

特にバリントは、フェレンツィの影響から、患者の話に耳を傾けることが重要であると学び、これを彼の治療の基本姿勢としました。
つまり、「まず患者の話に耳を傾けよ」と言う言葉のように、バリントは一貫して、まず患者の話すところに耳を傾ける治療姿勢を持ち続けました。

また、バリントは臨床経験を通じて、『基底欠損』という独自の概念を提唱したことでも知られています。

基底欠損とは、患者の心理的な基盤に深刻な欠如がある状態(心の中に欠けているものがある状態)を指します。

バリントは、このような基底欠損の状態にある患者には、従来の『精神分析』の適用は困難であり、治療の効果が得づらいと考えました。
そのため、従来の精神分析が強調する『解釈』よりも、治療者と患者の間に築かれる関係そのものが重要視される必要があると提唱しました

このようにバリントは、古典的な精神分析技法では対応が難しい患者の治療に新たな視点を提供しました。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

横川滋章・橋爪龍太郎(2015)『生い立ちと業績から学ぶ精神分析入門  22人のフロイトの後継者たち 』 乾 吉佑 (監修), 創元社.

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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