ミネソタ多面的人格検査(MMPI:minnesota multiphasic personality inventory)

ミネソタ多面的人格検査(MMPI)

ミネソタ多面的人格検査(MMPI)』は、1943年にアメリカのミネソタ大学病院の”ハサウェイ(Hathaway, S. R.)”と”マッキンリー(McKinley, J. C.)”により公刊された『心理検査』になります。
心理検査の中では、『パーソナリティ(人格)検査』の『質問紙法』に分類されています。

『パーソナリティ(人格)検査の目的は、被検者(検査を受ける人)のパーソナリティを明らかにし、自己理解や支援に役立てることにあります。

ミネソタ多面的人格検査(MMPI)は、被検者にパーソナリティに関する質問が書かれている質問紙に回答してもらい、検査者がそれを分析することでパーソナリティを明らかにしようとします。
また、ミネソタ多面的人格検査(MMPI)の開発の目的は精神医学的診断を行うための客観的尺度として利用することであるため、『精神障害』の鑑別にも利用されています

ミネソタ多面的人格検査(MMPI)の質問項目は、原版では550項目、最新版のMMPI-3では335項目となっています。
回答方法は、2つの選択肢(<あてはまる><あてはまらない>)から選ぶ2件法となっています(2つの選択肢から選べない場合は<どちらともいえない>と回答することも可能ですが、10個未満になるようにしなければいけません)。

ミネソタ多面的人格検査(MMPI)では、精神医学的診断の補助や幅広いパーソナリティの理解を可能にするため、14もの基礎尺度が用意されています。
14の基礎尺度はそれぞれ、4つの『妥当性尺度』と10の『臨床尺度』で構成されています。

ミネソタ多面的人格検査(MMPI)の具体的な実施方法は以下のようになっています。

実施方法

実施前

  • 準備物(検査者)
    • ミネソタ多面的人格検査(MMPI)の検査用紙
    • ボールペン

実施中

  • 教示(検査者→被検者)
    • 「質問項目を読み、あてはまる場合には<あてはまる>に〇を、あてはまらない場合は<あてはまらない>に〇をつけてください」
    • 「どうしても、決められない場合は<どちらともいえない>に印をつけても大丈夫ですが、合計の数が10をこえないようにお願いいたします。」
    • 「わからないことがあればお聞きください。」
  • 実施(被験者)
    • 被検者は教示の通りに実施します。
  • 記入後(検査者)
    • 記入漏れがないか確認します。

実施後

  • 採点
    • マニュアルに従い、結果の採点を行い、プロフィールを作成します。
  • 解釈(検査者)
    • 妥当性尺度
      • 検査の『妥当性』(意図したものが測定できているかどうかを示す指標)を確認し、必要によっては判定の中止、再検査を検討します。
    • 臨床尺度
      • それぞれの尺度の値の相互関係から分析します。
  • フィードバック(検査者→被検者)
    • 検査者は検査により明らかになった被検者のパーソナリティを被検者にフィードバックし、自己理解や支援に役立てます。
    • この手続きは所属機関によって様々で、他職種から依頼があり実施した場合は、他職種へ検査結果を報告し、他職種から被験者にフィードバックする場合もあります。
    • フィードバックを行う際には、検査結果をあらかじめ心理検査所見として書面にまとめる場合も多くあります。
妥当性尺度

プロフィール(検査結果)全体の妥当性や、被検査の受験態度、パーソナリティの歪みなどの特徴を理解するための情報となります。
妥当性尺度は、?、L、F、Kの4つが設定されています。

  • ?尺度(疑問尺度)
    • 被検者が「どちらともいえない」と回答した項目の数を表します。
      これが多い場合、妥当性が疑わいため、判定を中止、もしくは再検査を検討する必要があります。
  • L(lie)尺度(虚偽尺度)
    • 被検者が自分を好ましく見せようとする場合に値は高くなります。
  • F(frequency)尺度(頻度尺度)
    • 正常な成人では出現率が低くなる回答(奇異な感覚経験,思考異常,孤立感等)をした場合に値は高くなります。
  • K(Correction)尺度(修正尺度)
    • 検査に対する警戒の程度(防衛的態度)を調べるものです。
      防衛的態度が強い場合に値が高くなります。
    • また防衛的態度による回答の歪みを修正するための点数としても扱われます。
臨床尺度

臨床尺度は10の尺度から構成されており、それぞれの尺度の値の相互関係を読み解くことが、被検者のパーソナリティの理解に繋がります。

臨床尺度の解釈は、最も高い尺度と2番目高い尺度の組み合わせである『2数字高点コード』、あるいは3番目に高い尺度まで含めた組み合わせである『3数字高点コード』を中心に行い、そこに他の尺度も組み合わせて理解していきます。

例えば、被検者のプロフィール(検査結果)が第1,、2、 3尺度が高く、第6、 7、 8、 9尺度が低い右下がりのプロフィールの場合、被検者の状態は『神経症圏』と解釈されます。
また、反対に、第6、 7、 8、 9尺度が高く、第1,、2、 3尺度が低い右上がりのプロフィールの場合、被検者が『精神病圏』の状態であると解釈されます。

臨床尺度の項目のほとんどは精神障害の名前が使用されてますが、これらの値が直接被検者の診断を決定することにはならないため注意が必要です。

  • 第1尺度  心気症尺度(Hs:Hypochondriasis)
    • 心気的(自分の健康状態を過度に気にして悩む)な傾向を示します
  • 第2尺度  抑うつ尺度(D:Depression)
    • 抑うつ的(気分の低下や行動の抑制)な状態を示します。
  • 第3尺度  ヒステリー尺度(Hy:ConversionHysteria)
    • ヒステリー(自身の状態に気付きづらく、身体症状が生じやすい)の傾向を示します。
  • 第4尺度  精神病質的偏奇性尺度(Pd:Psychopathic Deviate)
    • 精神病質的なパーソナリティー(反社会的、敵意や反抗)の傾向を示します。
  • 第5尺度  男子性・女子性尺度(Mf:Masculinity―Femininity)
    • 性役割に対してどのように感じているかを示します。
  • 第6尺度  パラノイア尺度(Pa:Paranoia)
    • パラノイア(疑心や妄想)を抱きやすい傾向を示します。
  • 第7尺度  精神衰弱尺度(Pt:Psychasthenia)
    • 緊張感や不安、強迫症に関する傾向を示します。
  • 第8尺度  統合失調症尺度(Sc:Schizophrenia)
    • 統合失調症(幻覚、妄想、思考や行動の異常)の傾向を示します。
  • 第9尺度  軽躁性尺度(Ma:Hypomania)
    • 軽躁(過剰な思考や行動、衝動性)の傾向を示します。
  • 第0尺度  社会的内向性尺度(Si:Social Introversion)
    • 社会的内向性(内向的で、社会との接触を好まない)の傾向を示します。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

山内俊雄・鹿島晴雄編『精神・心理機能評価ハンドブック』中山書店.

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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