森田療法(morita therapy)【心理学用語】臨床心理学

森田療法(morita therapy)

森田療法』は、1920年に"森田 正馬"によって確立された日本独自の『心理療法』になります。
治療の対象ははじめ『強迫性障害』や『社交不安障害』、『広場恐怖』、『不安障害』などの『神経症』の方々でしたが、現在は、『心身症』や『うつ病』をはじめとした多様な症状に用いられています。

『森田療法』では『神経症』の成り立ちを、素質(『ヒボコンデリー性基調』)×誘因×病因 (『精神交互作用』)といった図式で説明しようとしました。

『ヒポコンデリー性基調』とは、全ての人が共通して持つ特徴(性格素質)の程度が強すぎた場合のこと(神経質性格)を表します。
その特徴として、内向的で敏感、心配性であると同 時に完璧主義、理想主義、頑固、負けず嫌いなどが挙げられます。

そして、このような『ヒポコンデリー性基調』が基盤となり、『とらわれの機制』が生じたときに、『神経症』に陥ると考えました。

『とらわれの機制』とは、注意と感覚が相互に影響することによって生じる悪循環(『精神交互作用』)のことを指します。
例えば、赤面してしまうことに対し不安を感じると、自分の顔に意識が集中してしまい、顔の肌の感覚が敏感になってしまいます。そうなると、さらに不安が増し、より顔に意識が集中し、更に顔が紅潮してしまうといった悪循環を指します。

また、『とらわれの機制』は、『思考の矛盾』と呼ばれる状態によっても引き起こされるとされています。
『思考の矛盾』とは、自然に生まれてくる感情を「こうでないといけない」「こうあってはならない」と知性や理性によって解決しようとしたり、「あってはならないもの」として扱おうとする状態を指します。
例えば、不安に感じたり緊張する自分(現実の自己)を、「そうあってはいけない」や「緊張や不安はあってはいけない」(理想の自己)などと思うと、より一層理想と現実の自己の違いに葛藤が生まれ、かえってそこにとらわれてしまうといった状態を指します。

このように『森田療法』では、自然に生まれてくる感情や欲求に対し、一部だけに注意を向け特別視したり、それを取り除こうと排除しようとする傾向が『とらわれの機制』を生み出し、それが『神経症』の発症に繋がっていくと考えました。

そのため、『森田療法』では、不安を病理ではなく、自然な感情反応として捉え、生じてくる不安や欲求を「あるがまま」に受けとめる姿勢を培うことが治療に繋がると考えました。

また、『森田療法』では、不安を「より良く生きたい」といった健康的な欲求(『生の欲望』)があるからこそ生じるもの(もしそれが出来なかったらどうしようという不安)であるとも理解します。
そのため、『森田療法』の治療では、このような本来の欲求である『生の欲望』が建設的な方向に向けられ発揮されていくことも目指していきます。

『森田療法』の治療は、主に定められた入院治療により行われていましたが、現在は外来で通院しながらの治療も行われています。

入院では以下の4期に分け治療が行われます。

  • 絶対臥褥期』(4日~1週間)
    • 個室で終日横になり、「不安や症状をそのままにしておく」ことを指示される。
      これにより、不安との付き合い方や心身の意欲の回復を体験する
  • 軽作業期』(3日~1週間)
    • 昼間は外に出て日光にふれたり、軽い作業を行う。
      意欲の発揮と共に、多少の欲求不満に対する感情の変化や意欲の向上を体験する。
  • 重作業期』(1週間~1か月)
    • 不安はそのままに他の患者達と作業に取りくみます。
      これにより、不安にとらわれた状態(『気分本位』)から、事実や目的に合わせた態度や状態(『目的本位』)へと転換出来ていくことを体験する
  • 生活訓練期』(1週間~2週間)
    • 外泊などを行いながら社会復帰の順備をします。

人物

  • "森田 正馬"

キーワード

  • 森田療法
  • 『ヒボコンデリー性基調』
  • 『精神交互作用』
  • 『とらわれの機制』
  • 『生の欲望』

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