内観療法(naikan therapy)
内観療法
『内観療法』は、1916年から1988年に日本で活躍した"吉本 伊信"が開発した自己探求の方法になります。
心身の健康な人々だけでなく、心理的な問題を抱える人々に対しても効果的であり、自己啓発的な機能だけでなく、『心理療法』としての機能も持ち合わせているとされています。
内観療法とは、過去の自分の行動の振り返りや、自分にとって重要な人物との関係を3つの視点から見つめ直すことにより、心の健康や自己成長を促していく心理療法になります。
ここでの内観とは、自分にとって大切な人との関係を振り返ることであり、以下の3項目に絞って具体的に調べることを指します。
- 「お世話になったこと」
- 「(お世話を)して返したこと」
- 「迷惑をかけたこと」
内観療法には、主に2つの形態があります。
- 『集中内観』
- 1週間の間、特別な環境で集中して自己を見つめる方法。
- 『日常内観』
- 日常生活の中で、数時間から数分間、定期的に内観を行う方法。
内観療法を行うことにより、多くの人は「たくさんの世話を受けていた自分」「して返したことの少ない自分」「たくさんの迷惑をかけていた自分」の姿に気づき始めます。
つまり、自分がどれほど多くの愛情や支えを受けてきたかを実感しつつも、それを当然のこととして感謝の念を抱かず、して返すこともせず、むしろ迷惑ばかりをかけてきた自分の自己中心性に気づくようになります。
そしてこの気づきが、「自分は誰からも愛されていない」といった恨みや怒り、「自分は一人でここまできた」といった傲慢さを薄れさせ、他者への感謝の気持ちの芽生えに繋がっていくとされています。
内観療法の限界として、内観療法は重要な人間との関係を振り返るため、過去に愛情をあまり受けていなかった人や、虐待の経験がある人にとっては、効果が得にくいことが挙げられます。
また、内観を行うためには、ある程度の欲求不満耐性や、自分と他者を分けて考えることの出来る精神的成熟、自己向上の意欲が必要とされており、著しく精神状態が不安定な状態では適用が困難とされています。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。