新行動主義心理学(neo-behaviorism)
新行動主義心理学
『新行動主義心理学』は、『行動主義心理学』から発展した心理学の一分野であり、1930年ごろに生み出されていきました。
"ハル(Hull, C. L.)"や"トールマン(Tolman, E. C.)"、"スキナー(Skinner, B. F.)"などが創始者として知られています。
新行動主義とは、人間の行動を単に「刺激(S:Stimulus)」と「反応(R:Response)」の関係だけで理解しようとするのではなく、刺激が「有機体(O:Organism)にどう解釈され、その結果どのような反応が引き起こされるのかも考慮して理解しようとする立場を指します。
”ワトソン(Watson, J. B.)”が提唱した行動主義では、人間の行動がどのように学習され、強化されていくのかについて、刺激(S)と反応(R)の関係に注目し、理解しようとしました(『S-R理論』)。
そして、人間や動物の行動を、外部からの刺激に対する直接的な反応として捉えていました。
しかし、このような行動主義の立場(観察可能な外的な行動に限定して理解しようとする立場)は、内的な動機や欲求、感情といった見えない要因を無視していると考えられ、行動の全体像を理解するには不十分であると批判されてきました。
そこで、ハルやトールマンをはじめとする新行動主義者たちは、従来のS-R理論を発展させ、『S-O-R理論』を提唱しました。
ここでの「O」とは「有機体(O:Organism)」を指します。
つまり、人間の行動を単なる刺激(S)と反応(R)の関係だけでなく、刺激が有機体(O)にどう解釈され、その結果どのような反応が引き起こされるのかを理解しようとしました。
これにより、行動や反応(R)は外的な刺激(S)だけでなく、個々の有機体(O)が持つ内的な状態や欲求、認知過程によっても影響されることが理解されるようになりました。
つまり、新行動主義では、行動を外的な刺激と反応だけでなく、個体の内的な状態や動機づけを考慮することが特徴になります。
このような新行動主義の登場により、人間の行動は単に外部の刺激によってのみ引き起こされるのではなく、内的な欲求の影響も受ける可能性があると考られるようになり、当時の行動主義や学習理論、認知心理学の発展に大きな影響を与えました。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。