絵画欲求不満テスト(P-Fスタディ:picture- frustration study)

絵画欲求不満テスト(P-Fスタディ)

絵画欲求不満テスト(P-Fスタディ)』は、『 心理検査』の一つであり、1945年にアメリカの心理学者である"ローゼンツァイク(Rosenzweig, S.)"によって発表されました。
心理検査の中では、『パーソナリティ(人格)検査』の『投映法』に分類されています

パーソナリティ(人格)検査の目的は、被検者(検査を受ける人)のパーソナリティを明らかにし、自己理解や支援に役立てることにあります。

P-Fスタディでは、欲求不満が喚起される場面(例えば、他人から攻撃を受けたり被害を受けたりしている場面)が描かれたイラストが使用されます。
検査者は、被検者に24場面のイラストが描かれた検査用紙を提示し、被検者はイラストに登場する人物が空白の吹き出しを持っていると想像し、その人物の立場に立ってどのようなセリフを発するかを考え、記入します
そしてそれを検査者が分析することで、被検者のパーソナリティを明らかにしようとします

P-Fスタディは、ローゼンツヴァイクによる欲求不満研究の中で生み出されていきました。
そしてその目的は、被験者の欲求不満場面に対する反応傾向や、被検者の人格の特徴を明らかにすることにあります。

P-Fスタディには、24の異なる欲求不満場面が描かれていますが、これらは「自我阻害場面」と「超自我阻害場面」といった二つの場面に分類されています。

自我阻害場面とは、人為的あるいは非人為的な問題によって自我が阻害されて欲求不満を招いている場面です。
つまり、自分の思い通りにいかない状況や障害に直面し、欲求不満が生じている場面になります。

その一方で、超自我阻害場面とは、他者からの非難によって欲求不満を招いている場面を指します。
つまり、他の人から非難されたり、道徳的に叱責されたりして欲求不満を感じている場面になります。

P-Fスタディの具体的な実施方法は以下のようになっています。

実施方法

実施前

  • 準備物(検査者)
    • P-Fスタディの検査用紙
    • ボールペン

実施中

  • 教示(検査者→被検者)
    • 「(表紙の例を見せながら)例を見てください。」
    • 「左側の人が右側の人にある言葉を言っている場面です。右側の人はそれに対してどのように答えるでしょう。この人が答えると思う最初に思いついた言葉を、空欄の吹き出しに書いてください。」
    • 「ページをめくると、例のような絵が1から24までありますから、番号順に出来るだけ速く書いてください。」
  • 実施(被験者)
    • 被検者は教示の通りに実施します。
  • 記入後(検査者)
    • 記入漏れがないか確認します。

実施後

  • 採点(検査者)
    • 被験者の反応を、アグレッション(攻撃)の方向と型といった2つの次元で分類し、記号で表示します。
    • アグレッションの方向(Directions of Aggression)
      • 他責的反応(E-A:Extraggression)
        • 欲求不満の原因を他人や環境のせいにする反応を指します。
      • 自責的反応(I-A:Intraggression)
        • 欲求不満の原因を自分の責任にする反応を指します。
      • 無責的反応(M-A:Imaggression)
        • 欲求不満の原因を自分にも周囲にも求めることなく、攻撃を避ける反応を指します。
    • アグレッションの型(Types of Aggression)
      • 障害優位型(O-D:Obstacle Dominance)
        • 欲求不満に対する自我の表明を避け、障害の指摘・強調にとどめる反応を指します。
      • 自我防衛型(E-D:Ego Defense)
        • ストレスを解消するために、自我を強調する反応を指します。
      • 要求固執型(N-P:Need-Persistence)
        • なんらかの形で欲求不満を解決しようとする反応を指します。

まず、各場面における反応の内容を集計し、アグレッションの方向や型ごとの出現比率を算出します。
そして、「GCR(集団順応度または集団一致度)」や「超自我因子」、「反応転移分析」、「主要反応」を算出し、整理します。

  • 解釈(検査者)
    • 採点の結果を基に、被検者の状態を判定します。
  • フィードバック(検査者→被検者)
    • 検査者は検査により明らかになった被検者の状態を被検者にフィードバックし、自己理解や支援に役立てます。
    • この手続きは所属機関によって様々で、他職種から依頼があり実施した場合は、他職種へ検査結果を報告し、他職種から被験者にフィードバックする場合もあります。
    • フィードバックを行う際には、検査結果をあらかじめ心理検査所見として書面にまとめる場合も多くあります。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

この記事を書いた人

上岡晶の画像

臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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