自我による自我のための退行(RISE:regression in the service of the ego)
自我による自我のための退行
『自我による自我のための退行』は、1952年に"クリス(Kris, E.)"により提唱された概念になります。
『退行』とは、現在の状態より以前の状態へ、あるいは未発達な段階へ逆戻りする心の働きを表します。
これは『精神分析』を創始した”フロイト(Freud, S.)”により提唱された理論であり『自我』の『防衛機制』の一つに含まれています。
退行についてフロイトは病的な心の働きであると捉えていましたが、クリスは芸術家の分析や研究を通して退行の創造的な働きを明らかにしました。
それにより生み出されたのが、自我による自我のための退行の考えになります。
自我による自我のための退行とは、より新しい考えやより新しい適応を生み出すものとして退行は用いられており、創造性の発揮には退行が不可欠であると考える立場を指します。
この考えは”シェーファー(Schafer, R.)”に応用され『創造的退行』の概念として『自我心理学』の中に組み込まれていきました。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。