レスポンデント(古典的)条件付け(respondent/classical conditioning)

レスポンデント(古典的)条件付け

レスポンデント(古典的)条件付け』は、”パヴロフ(Pavlov, I.P.)”の『条件反射』の研究がもとになり生み出された理論です。

パヴロフの実験は『パヴロフの犬』とも呼ばれています。

パヴロフの犬の実験は、ベルを鳴らしてから餌を与えることを繰り返すと、ベルを鳴らすだけでも犬は唾液を出すというもので、信号となる刺激と信号づけられる反応との間に一時的な結合が形成されることを示したものになります。

そのため、レスポンデント(古典的)条件付けは『パヴロフ型条件付け』とも呼ばれます。

レスポンデント(古典的)条件付けの理論は以下になります。

無関係な『中性刺激』の直後に不随意的にある反応を誘発させる無条件性の刺激を提示することで、その中性刺激が『条件刺激』となり、それによってその不随意運動が誘発されるようになります。

これは受動的に生じるもの(レスポンデント)とされています。

『レスポンデント(古典的)条件付け』
『レスポンデント(古典的)条件付け』

このように、条件刺激と『無条件刺激』の対提示によって、本来は無条件刺激によってのみ触発される『無条件反応』が『条件反応』となり、条件刺激との新たな連合が生まれるようになります。
この現象をレスポンデント(古典的)条件付けと言います。

条件付け

環境刺激を操作することで、人間や動物の反応を生成、修正、除去する手続きのこと。

無条件刺激(US:Unconditional Stimulus)

無条件反応を引き起こす刺激のことを言います。

上の図では「エサ」になります。

無条件反応(UR:Unconditional Response)

条件付けなしで起こる生得的な反射を指します

上の図では「エサによる唾液の分泌」になります。

中性刺激

本来は生体に反応を起こさない刺激のことを指します。

上の図では、「ベルの音」になります。
ベルの音は本来、犬の唾液の分泌を引き起こしません。

条件刺激(CS:Conditional Stimulus)

条件付けの対象となる刺激のことを指します。

上の図では、ベルの音が唾液の分泌を起こすことが狙いであるため、「ベルの音」が条件刺激に相当します

条件反応(CR:Conditional Response)

条件付けの成立によって条件刺激で起こるようになった反応のことを指します。

上の図では、「ベルの音(条件刺激)によって生じるようになった唾液の分泌』が条件反応に相当します。

レスポンデント(古典的)条件付けの場合、中性刺激(条件刺激)の直後に無条件刺激を随伴させることが『強化』になります。

レスポンデント(古典的)条件付けでは、条件刺激と条件反応の関係が強化されると、その条件刺激と類似した刺激に対しても条件反応が生じるようになります。
これを『般化』と呼びます。

また、特定の条件刺激の時のみに強化し、それと似た刺激に対しては強化せずにいた場合、その特定の条件刺激にしか条件反応は起こらなくなります。
これを『分化』と呼びます。

さらに、条件付けが成立した後、無条件刺激の対提示をせずに条件刺激のみを提示し続けると、条件反応との繋がりが失われることがあります。
これを『消去』と言います。

消去が生じ、しばらく時間があいた後であっても、条件刺激の提示により条件反応が生じることがあります。
これを『自発的回復』と言います。

また、消去の過程において、強い外部刺激を受けることにより、条件反応が一気に回復(生じる)ことがあります。
これを『脱制止』と言います。

強化

刺激と反応の結びつきを強めることを言います。

レスポンデント(古典的)条件付けでは、条件刺激と無条件刺激の対提示が強化に当たります。

上の図で言えば、「ベルの音の直後にエサを提示すること」を指します。

般化

条件刺激に類似した刺激でも条件反応を起こすことを言います。

上の図では、「ベルの大きさを多少変化させても唾液の分泌が生じること」を指します。

分化

条件刺激と類似した刺激を区別し、条件刺激のみ条件反応を引き起こすようになることを言います。

条件刺激の時は無条件刺激を対提示し、類似した刺激の時は無条件刺激を対提示しないことで可能になります。

上の図では、「通常のベルの音では、エサを与え、それよりも大きい音の時はエサを与えないようにすると、大きい音を区別して唾液の分泌が生じなくなる」ことを指します。

消去

条件づけ成立後、『無条件刺激』の対提示を止めて、『条件刺激』のみの提示を続けることで、『条件反応』との連合が失われることを言います。

上の図では、「エサを与えずにベルの音だけの提示が続くと、唾液の分泌は消失する」ことを指します。

自発的回復

消去成立後、休息を与えると、条件刺激に対し、条件反応が生じるようになることを指します。

脱制止

消去訓練中に大きい音などの強い外部刺激によって条件反応が一気に回復することを言います。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

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この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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