文章完成法(SCT:sentence completion test)

文章完成法(SCT)

文章完成法(SCT)』は、『心理検査』の一つであり、1897年に”エビングハウス(Ebbinghaus, H.)"が不完全文章を用いて『知能』を測定しようとしたことが起源とされています。
心理検査の中では、『パーソナリティ(人格)検査』の『投映法』に分類されています

パーソナリティ(人格)検査の目的は、被検者(検査を受ける人)のパーソナリティを明らかにし、自己理解や支援に役立てることにあります。

文章完成法(SCT)では、被検者に未完成の文章(例えば、「私は今、__」や、「私の父は、__」など)を提示し、連想したことをその続きに自由に書いてもらいます。
そしてそれを検査者が分析することで、被検者のパーソナリティを明らかにしようとします

文章完成法(SCT)の結果の整理や分析には、主に以下の二つの方法が用いられています。

  • 形式分析
    • 被検者が記載した文章の長さや、未記入部分の数や特徴、誤字脱字、言葉遣いなどを評価します。
      このような形式的な特徴から、被検者のパーソナリティを明らかにしようとします
  • 内容分析
    • 被検者が記載した文章を読んだ時に受ける印象や、文章を通して表現されている被検者の自己像や価値観、対人関係、社会への態度などを検討します。
      このような内容の特徴から、被検者のパーソナリティを明らかにしようとします。

文章完成法(SCT)の具体的な実施方法は以下のようになっています。

実施方法

実施前

  • 準備物(検査者)
    • 文章完成法(SCT)の検査用紙
    • ボールペン

実施中

  • 教示(検査者→被検者)
    • 「この質問紙では、(表紙にある)例のように、書きかけの文章が書かれています。」
    • 「その文章のその続きに、あなたが最初に思い浮かんだことを書いて文章を完成させていってください。できるだけ早く、1から順に記載してください。」
    • 「正解、不正解はありません。わからないことがあればお聞きください。」
  • 実施(被験者)
    • 被検者は教示の通りに実施します。
  • 記入後(検査者)
    • 記入漏れがないか確認します。

実施後

  • 解釈(検査者)
    • 形式分析
      • 被検者が記載した文章の長さや、未記入部分の数や特徴、誤字脱字、言葉遣いなどを評価
    • 内容分析
      • 被検者が記載した文章を読んだ時に受ける印象や、文章を通して表現されている被検者の自己像や価値観、対人関係、社会への態度などを検討
  • フィードバック(検査者→被検者)
    • 検査者は検査により明らかになった被検者の状態を被検者にフィードバックし、自己理解や支援に役立てます。
    • この手続きは所属機関によって様々で、他職種から依頼があり実施した場合は、他職種へ検査結果を報告し、他職種から被験者にフィードバックする場合もあります。
    • フィードバックを行う際には、検査結果をあらかじめ心理検査所見として書面にまとめる場合も多くあります。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

この記事を書いた人

上岡晶の画像

臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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