系統的脱感作法(systematic desensitization)

系統的脱感作法

系統的脱感作法(けいとうてきだつかんさほう)』は『行動療法』に含まれる一つの治療技法になります。
神経症』の治療法として、”ウォルピ(Wolpe, J.)”により編み出されました。

ウォルピは神経症について「生理学的に正常な個体において学習によって得られた持続的で不適応的な習慣であり、多くの場合は不安反応がその中心をなしている」と考えました。

そこで、ウォルピは治療技法や流れを整理し、以下の手順にまとめました。

  • 不安と拮抗する反応の習得
  • 不安階層表』の作成
  • 不安と拮抗する反応と不安階層場面を対提示する手続き

系統的脱感作法では、恐怖や不安はリラックスした状態と同時には起こりえないという『逆制止』の考えのもと行われます。

不安と拮抗する反応には、”ジェイコブソン(Jcobson, E.)”が生み出した『筋弛緩法』を簡便化した『漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)』が多く用いられます。

系統的脱感作法では、まず漸進的筋弛緩法などのリラクゼーション技法を習得します。

次の不安階層表の作成では、自身が挑戦したい不安場面を挙げ、それぞれの不安の度合いを数値化し、順番に並び替えます。
そして、不安階層表に基づき、最も不安を感じにくい場面から段階的に取り組んでいきます。

不安を引き起こす場面で、習得した漸進的筋弛緩法などのリラクゼーション技法を実施します。
不安とリラックスは同時に起こりえない(逆制止)ため、不安を引き起こす場面でもリラックス状態が作れると、不安は生じづらくなってきます。

このような取り組みを繰り返すことで、不安階層表でリスト化した強い不安を引き起こす場面でも不安が生じづらくなり、治療目標であるより良い生活に繋がっていくといった治療技法になります。

漸進的筋弛緩法

漸進的筋弛緩法は、ジェイコブソンの筋弛緩法をウォルピが簡便化し体系化した技法になります。

漸進的筋弛緩法では、筋弛緩法の目的と同様に、筋肉の緊張と弛緩を繰り返すことで、リラックスを促す方法になります。

各部位の筋肉を10秒間ほど力を入れ、緊張させてから、10秒間ほど力を抜き脱力させます。

順序は様々ですが、手首、足首、両腕、両足、お腹、背中、肩、首、顔、全身などの順で、各部位を一つずつ漸進的に緊張させ、弛緩させていくといった方法になります。

漸進的筋弛緩法のセッションは1回約15分ほどです。

不安階層表

不安階層表は、自覚的障害単位(SUD:subjective unit of distress)と呼ばれる自ら感じる不安や緊張の度合いをもとに作成されます。

治療の目標として挙げられた、自分の望む生活に向けて、それらの妨げとなっている不安場面を挙げていきます。
そして、最も強い不安を感じる場面を100点、全く不安を感じない場合を0点として、数値化を行います。

それらを点数順に並び替えリスト化したものが不安階層表になります。

系統的脱感作法や『暴露療法/エクスポージャー』では、SUDの得点の低いものから繰り返し取り組みます。
それが上手にこなせるようになれば、得点の高いものも困難なくこなせるようになります。

また、実施を強制することはなく、ペースも自分で決め行う方法となっております。

『不安階層表』
『不安階層表』
逆制止

逆制止は、不安や恐怖、緊張とその逆の状態であるリラックスは同時に起こりえないことを説明するために用いられる理論です。

例としては、腕の筋肉が挙げられ、腕を曲げ伸ばししているときには片側の筋肉は伸びるが、反対側の筋肉は縮みます。

この現象を応用したものが系統的脱感作法であり、不安を引き起こす環境でも、リラックスな状態を作ることで出来れば、不安は減少していくといった治療技法になります。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

動画での解説はこちら

この記事を書いた人

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臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

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