主題(絵画)統覚検査(TAT:thematic apperception test)

主題(絵画)統覚検査(TAT)

『主題(絵画)統覚検査(TAT)』は、『 心理検査』の一つであり、1935年にアメリカの心理学者である"ヘンリーマレー(Murray, H. A.)"によって発表されました。
心理検査の中では、『パーソナリティ(人格)検査』の『投映法』に分類されています

パーソナリティ(人格)検査の目的は、被検者(検査を受ける人)のパーソナリティを明らかにし、自己理解や支援に役立てることにあります。

TATでは、被験者に一連の絵カードを提示し、その絵がどのような状況を表しているのか、またその背景や登場人物の感情、ストーリーの結末について自由に語ってもらいます。
そしてそれを検査者が分析することで、被検者のパーソナリティを明らかにしようとします

TATははじめ、30枚の図版と1枚の白紙からなる計31枚の中から、被験者の特徴や目的に応じて20枚のカードを選択して被検者に提示する方法をとっていました。
しかし、近年では特に有用とされる10枚程度のカードを用いることが一般的です。

TATの目的は、被験者が語る物語の中に表れる心的プロセスや心理構造を把握し、被験者の内面世界を理解することにあります。
つまり、TATは、被検者の語る物語の内容そのものではなく、被験者がどのように状況を解釈し、そこにどのような感情や価値観を反映させるているかに注目します。

例えば、被験者が物語を構成する際に描く登場人物の感情やストーリーの展開は、『無意識』の欲求や葛藤が反映されていることがあります。
こうした反応は、日常生活では見えにくい個人の心の動きやパターンを浮き彫りにします。

TATの具体的な実施方法は以下のようになっています。

実施方法

実施前

  • 準備物(検査者)
    • TAT用の絵カード(10~20枚を選定)
    • 記録用紙
    • ボールペンまたは鉛筆
    • ストップウォッチ

実施中

  • 教示(検査者→被検者)
    • 「これは物語を作るテストです。」
    • 「これから、あなたにいろいろな人や景色の描かれた絵を見せます。この絵を見て思い浮かぶ物語を私に話してください。
      この絵の中の人は今どんな気持ちで、何を感じ、どうしているのか、この絵の前にどんなことがあって、この絵の後にはどうなっていくのかお話の筋をつけてお話ください。
      どんな内容でも構いませんので、感じたままにお話しください。」
    • 「絵は全部で10枚ほどあります。1枚ずつお渡しますので,1枚に1つずつお話を話してください。お話が終わったら絵を机に伏せてください。」
  • 実施(被験者)
    • 被検者は教示の通りに実施します。
  • 記入後(検査者)
    • 記入漏れがないか確認します。

実施後

  • 分析(検査者)
    • マニュアルに従い、結果の分析を行います。
  • 解釈(検査者)
    • 分析の結果を基に、被検者の状態を判定します。
  • フィードバック(検査者→被検者)
    • 検査者は検査により明らかになった被検者の状態を被検者にフィードバックし、自己理解や支援に役立てます。
    • この手続きは所属機関によって様々で、他職種から依頼があり実施した場合は、他職種へ検査結果を報告し、他職種から被験者にフィードバックする場合もあります。
    • フィードバックを行う際には、検査結果をあらかじめ心理検査所見として書面にまとめる場合も多くあります。

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

坪内順子(1984)『TATアナリシス:生きた人格診断』垣内出版.

遊間義一・東條真希(2021)「TAT検査(標準比較法)の教材開発」59, p13-28, 兵庫教育大学研究紀要.

この記事を書いた人

上岡晶の画像

臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA