妥当性(validity)
妥当性
『妥当性』は、心理学研究において重要な概念であり、『心理検査』や心理尺度(心を測るための物差し)の正確性を検証するために用いられます。
また、正確な心理検査や心理尺度のためには妥当性だけでなく『信頼性』と呼ばれる概念も重要とされています。
妥当性とは、ある測定の方法や手続きによって得られた測定結果が、目的とする構成概念を実際に測れているかどうかを示す指標になります。
例えば、測定しようとしている構成概念が体重である場合、体重計が妥当性の高い検査になりますが、測定しようとしている構成概念が身長の場合、体重計は妥当性の低い検査と評価されます。
妥当性の指標には、『内容的妥当性』や『基準関連妥当性』、『構成概念妥当性』と呼ばれる種類があり、以下のような方法や概念を用いて妥当性の検証を行います。
- 内容的妥当性
- 『表面的妥当性』
- 『論理的妥当性』
- 基準関連妥当性
- 『併存的妥当性』
- 『予測的妥当性』
- 構成概念妥当性
- 『収束的妥当性』
- 『弁別的妥当性』
- 内容的妥当性
測定のために準備した検査や尺度の内容(項目)が、実際に測定したいものを測定できているかどうかを示す指標になります。
その分野の専門家による判断や検証により、内容的妥当性が表されます。表面的妥当性とは、検査や尺度の内容(項目)を見たときに、それらが測定したいものを実際に測定できているように見えるかどうかで表される指標になります。
論理的妥当性とは、検査や尺度の内容(項目)が、目的とする構成概念をどの程度反映しているかを専門家が論理的に考察、検証することで表される指標になります。
表面的妥当性の例としては、ストレス測定を目的として作成した検査を実施する際に、被検者が質問項目を見てストレスに関して質問されているとわかる場合、表面的妥当性の高い検査と評価されます。
内容的妥当性の問題点として、数量的は評価ではなく、専門家などによる主観的な評価のため客観性に乏しい場合があるとされています。
- 基準関連妥当性
測定のために準備した検査や尺度と、それに関連する外的基準(既に妥当性、信頼性の確保された他の検査や尺度)の2つがどの程度関連しているか(一致度)により示される指標になります。
併存的妥当性とは、測定のために準備した検査や尺度と外的基準を同時に実施し、その2つの間の関連性(一致度)を測定することで表される指標になります。
予測的妥当性とは、測定のために準備した検査や尺度の実施後に外的基準を実施し、その2つの間の関連性(一致度)を測定することで表される指標になります。
作成した検査や尺度が、どの程度適切に実施以降の変化を予測できているかを示す指標になります。併存的妥当性の例としては、ストレス測定を目的として作成した検査と、既に妥当性、信頼性の確保されたストレス測定の検査をほとんど同時に実施し、その関連性が高ければ併存的妥当性の高い検査と評価されます。
予測的妥当性の例としては、ストレス測定を目的として作成した検査を実施し、その一年後に既に妥当性、信頼性の確保されたストレス測定の検査を実施し、その関連性が高ければ予測的妥当性の高い検査と評価されます。
- 構成概念妥当性
測定のために準備した検査や尺度が、目的とする構成概念をどの程度測定できているかを示す指標になります。
収束的妥当性とは、測定のために準備した検査や尺度と、関連性が高いと予想される検査や尺度の相関係数(2つの測定値の関連の強さを示す指標)を測定することで表される指標になります。
相関係数が高いと、収束的妥当性の高い検査と評価されます。弁別的妥当性とは、測定のために準備した検査や尺度と、関連性が低いと予想される検査や尺度の相関係数(2つの測定値の関連の強さを示す指標)を測定することで表される指標になります。
相関係数が低いと、弁別的妥当性の高い検査と評価されます。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
村山航(2012)「妥当性概念の歴史的変遷と心理測定学的観点からの考察」51, p118-130, 教育心理学年報
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\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。