ウェクスラー式知能検査(wechsler intelligence test)
ウェクスラー式知能検査
『ウェクスラー式知能検査』は、『ビネー式知能検査』に対する批判から1939年に”ウェクスラー(Wechsler, D.)”により開発された『ウェクスラー・ベルヴュー成人知能検査』の流れを汲む『知能検査』の総称になります。
知能検査は『知能』を客観的に検査し、表示することを目的とした『心理検査』です。
ビネー式知能検査は、はじめ精神遅滞(現在は知的障害)の子どもとそうでない子どもを判別し、知的な発達に遅れのみられる子ども達に特別な支援を行う目的で作成されました。
そのため、知能を個々の因子に分けず、『一般知能』を測定することを目的としていました。
しかし、ウェクスラーは知能を「目的的に行動し、合理的に思考し、環境を効果的に処理するための個人の集合的ないし総合的能力」と考え定義しました。
つまり、知能を単一の能力ではなく、いくつかの異なる能力の総体として捉えようとしました。
その考えに基づき生み出されたのが、ウェクスラー・ベルヴュー成人知能検査になります。
ウェクスラー・ベルヴュー成人知能検査では、検査を「言語性検査」と非言語である「動作性検査」の二種類に分類しています。
そして、その二種類の検査には「下位検査」と呼ばれる検査項目があり、それらを実施することで、被検者の『知能指数(IQ:Intelligence Quotient)』を測定します。
また、知能の指標として三種類の知能指数が使われており、それらは「言語性IQ」、「動作性IQ」、「全検査IQ」と呼ばれています。
ウェクスラー・ベルヴュー成人知能検査の構成は以下のようになっております。
- 「全検査IQ」
- 「言語性検査」と「動作性検査」を行うことにより得られる『知能指数』
- 「言語性IQ」
- 「言語性検査」を行うことにより得られる『知能指数』
- 「下位検査」は「知識」「類似」「算数」「理解」「単語」「数唱」などで構成されている。
- 「言語性検査」を行うことにより得られる『知能指数』
- 「動作性IQ」
- 「動作性検査」を行うことにより得られる『知能指数』
- 「下位検査」は「絵画完成」「絵画配列」「積木模様」「組合せ」「符号」「記号探し」などで構成されている。
- 「動作性検査」を行うことにより得られる『知能指数』
またウェクスラー式知能検査では、知能指数に『偏差知能指数(DIQ:deviation IQ)』が採用されています。
偏差知能指数とは、被験者の知能水準を同年齢集団の平均値からの ズレで表そうとするものです。
偏差知能指数
偏差知能指数(DIQ)=15 (X-M)÷SD +100
X=被検者の検査の得点 M=同年齢集団の平均得点 SD=同年齢集団の『標準偏差』
偏差知能指数では平均は100、標準偏差は15となります。
そのため、100以上が標準以上、100以下が標準以下となります。
また、ウェクスラー式知能検査は改訂や発展が続けられ、「群指数」と呼ばれる概念が生み出され、「言語理解」、「知覚統合」、「作動記憶」、「処理 速度」といった4つの因子についても測定する事が出来るようになりました。
そのあと、研究が続けられ「言語性IQ」と「動作性IQ」の分類が無くなり、4つの「群指数」から「全検査IQ」を測定する方法が採用されています。
ウェクスラー・ベルヴュー成人知能検査の適用年齢ははじめ10歳から60歳でした。
そこで、1949年には児童向けに『WISC(Wechsler Intelligence Scale for Children)』が作成されました。
また、1955年 には16以上の成人を対象とした『WAIS (Wechsler Adult Intelligence Scale)』が発表されました。
さらに、1967年にはWISCを拡張し、幼児を対象とした『WPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)』が作成されました。
これらは、現在でも改訂と発展を続けており、日本でも様々な現場で利用されています。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。