発達の最近接領域(zone of proximal development)
発達の最近接領域
『発達の最近接領域』は、ロシアの心理学者である”ヴィゴツキー(Vygodskiy, L. S.)"により提唱された概念になります。
発達の最近接領域とは、子どもが自力で問題を解決することができる現下の水準と、他者の助けを得ることで達成できる水準といった、2つの水準の間にある範囲のことを表します。
『知能』や発達の判定には『知能検査』や『発達検査』などが用いられることが多くありますが、これらは主に子どもが自力で問題解決できる水準を測定したものになります。
このことについてヴィゴツキーは、現時点の発達水準だけでなく、子どもの成長の可能性を含めて評価していくことが子どもの知的発達の適切な理解に繋がると考えました。
そして、教育においては、すでに成熟している機能よりも、成熟しつつある機能に向けて働きかけることが有効であると考えました。
それにより生み出されたのが発達の最近接領域の概念になります。
発達の最近接領域では、知的発達の水準を2つに分けて理解しようとします。
1つは、自力で問題解決できる現下の水準で、もう1つは他者からの援助によって達成できる水準です。
そして、この2つの水準の間にある範囲が発達の最近接領域になります。
例えば、子どもがある問題を解く時に、子どもが自分だけで解ける問題が現下の水準になります。
しかし、少し難しい問題は自力では解けないかもしれません。
ここで教師や親が適切なヒントやサポートを提供すると、子どもはその問題を解けるようになります。
この範囲が発達の最近接領域になります。
このように、発達の最近接領域の考えでは、子どもが自力で学べる範囲(現下の水準)だけでなく、適切な支援を受けることで学ぶことができる範囲(発達の最近接領域)を含めて子どもを理解することが必要と考えます。
そして成熟しつつある段階である発達の最近接領域に向けて、教育や指導を行うことが効果的な働きかけであると考えます。
参考・引用文献
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。