補償(compensation)【心理学用語】臨床心理学

補償(compensation)

補償』とは、心の機能を表す概念であり、"アドラー(Adler, A.)"が創始した『個人心理学』や”ユング(Jung、C. G.)”が創始した『分析心理学』で用いられています。

アドラーは、人には劣等感を克服して、自らの弱点を補おうとする心の働きがあると考えます。
この時の心の機能をアドラーは『補償』と呼び理解しようとしました。

つまり、人間は誰もが劣等感を持ち、それを『補償』するために、『無意識』のうちに様々な 試みを行うものであると考えました。
そしてアドラーは、このような人間の持つ不完全な状態から少しでも完全な状態に近づこうとする働きが人間の根源的なエネルギーや欲望であると考え、『権力(カ)への意志』と呼び重視しました。

その一方で、ユングは、人間の心は、『意識』と『無意識』の相補関係によって全体の均衡、調和を保つもの と考えました。
そのため、『意識』の態度があまりにも一面的になるとき、それを相補う動きが『無意識』に存在することを強調しました。
この時の心の機能をユングは『補償』と呼び理解しようとしました。

つまり、ユングは『(心的)構造論』における各構造間(『エス』『自我』『超自我』)の調整を営む無意識的機能として『補償』を捉えました。
そして、『補償』は心的機能の自己調整作用として、必然的に起こるものと考えました。

またユングは『神経症』について、『無意識』があまりにも『意識』を支配してしまったために『補償』作用が円滑に機能しなくなった状態と考えるなど、『補償』の概念を応用し『精神障害』の理解や治療に取り入れました。

参考・引用文献

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