コンプレックス(complex)【心理学用語】臨床心理学

コンプレックス(complex)

コンプレックス』は、『精神分析』やその流れを汲む理論で広く用いられている概念であり、特に”ユング(Jung、C. G.)”が創始した『分析心理学』では中心的な概念として使用されています。

『コンプレックス』とは、「特異であり、どちらかといえば苦痛の感情的色相を持ち、通常は視野から遮られているような事態におかれている心的内容物の塊」と定義されています。
つまり、『意識』によって統制することが困難な『無意識』の欲求や情動、観念、記憶などが複雑に絡み合い作られた心理的な要素の複合体を指します。
そのため、『コンプレックス』は「心的複合体」と呼ばれる場合もあります。

『コンプレックス』はユングによる言語連想実験を通じて発見されました。
ユングは言語連想実験を行う中で、被検者の連想が障害されることがあることに気づき、『無意識』による影響を仮定しはじめます。
それにより想定されたのが『コンプレックス』の存在になります。

ユングは、『コンプレックス』は通常『自我』には意識されず、連想が障害されることで初めて意識化されると考えました。
つまり、人は『自我』の機能が正常に働いていないときに、はじめて『コンプレックス』の存在に気づくと考えました。
そして、それは本人自身で気づくというよりも、他人にほのめかされて初めて気づくこと が多いと考えました。

『コンプレックス』は、両立しがたい相反する気持ちや、葛藤を起こすものとして存在していますが、時にそれ自体が意識をもっているかのように、また独立した人格かのように振る舞い、心を支配しようとする場合があります。
しかし一方で、『コンプレックス』には肯定的な側面もあるとされており、今まで受け入れられなかった『無意識』の内容が『意識』の中に同化されることにより、『自我』が補完され、創造的な力や心の発達に繋がっていくとされています。

『コンプレックス』の用語は他にも、”フロイト(Freud, S.)”が創始した『精神分析』では『エディプス・コンプレックス』、"アドラー(Adler, A.)"が創始した『個人心理学』では『劣等感コンプレックス』などとして使用されています。

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