コンプレックス(complex)

コンプレックス

コンプレックス』は、『精神分析』やその流れを汲む理論で広く用いられている概念であり、特に”ユング(Jung、C. G.)”が創始した『分析心理学』では中心的な概念として使用されています。

コンプレックスとは、「特異であり、どちらかといえば苦痛の感情的色相を持ち、通常は視野から遮られているような事態におかれている心的内容物の塊」と定義されています。
つまり、『意識』によって統制することが困難な『無意識』の欲求や情動、観念、記憶などが複雑に絡み合い作られた心理的な要素の複合体を指します。
そのため、コンプレックスは「心的複合体」と呼ばれる場合もあります。

コンプレックスはユングによる言語連想実験を通じて発見されました。
ユングは言語連想実験を行う中で、被検者の連想が障害されることがあることに気づき、無意識による影響を仮定しはじめます。
それにより想定されたのがコンプレックスの存在になります。

ユングは、コンプレックスは通常『自我』には意識されず、連想が障害されることで初めて意識化されると考えました。
つまり、人は自我の機能が正常に働いていないときに、はじめてコンプレックスの存在に気づくと考えました。
そして、それは本人自身で気づくというよりも、他人にほのめかされて初めて気づくこと が多いと考えました。

コンプレックスは、両立しがたい相反する気持ちや、葛藤を起こすものとして存在していますが、時にそれ自体が意識をもっているかのように、また独立した人格かのように振る舞い、心を支配しようとする場合があります。
しかし一方で、コンプレックスには肯定的な側面もあるとされており、今まで受け入れられなかった無意識の内容が意識の中に同化されることにより、自我が補完され、創造的な力や心の発達に繋がっていくとされています。

コンプレックスの用語は他にも、”フロイト(Freud, S.)”が創始した精神分析では『エディプス・コンプレックス』、"アドラー(Adler, A.)"が創始した『個人心理学』では『劣等感コンプレックス』などとして使用されています。

EARTHSHIP CONSULTING(2020)「コンプレックスとその解消法(ユング心理学)」(2024年1月15日取得)

森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.

日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.

臨床心理学用語事典「コンプレックス (complex)」(2024年1月15日取得)

氏原寛編(2004)『心理臨床大事典』改定版, 培風館.

動画での解説はこちら

この記事を書いた人

上岡晶の画像

臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho

精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA