サリヴァン(Harry Stack Sullivan)
サリヴァン
”サリヴァン(Sullivan, H. S.)”は1892年から1949年にアメリカで活躍した精神科医です。
『対人関係論』の創始者の一人として知られています。
1892年、サリヴァンは、アイルランド系移民の三世としてアメリカのニューヨークで生まれます。
家庭は貧しく、父親の共感性に乏しさや母親の影の薄さから、心細く不安の多い少年時代を過ごします。
1921年に精神科医になり、セントエリザベス病院に赴任、その後1922年にシェパード病院で活動します。
この時期、『統合失調症』は不治の病とされていました。
しかし、サリヴァンは『精神分析』や『予防精神医学』の理論を取り入れつつ、社会学的な側面を重視した『精神療法』を試みることにより統合失調症者の治療に成功します。
このような経験も踏まえて、サリヴァンは”フロイト(Freud, S.)”の『リビドー』論(人の根源的なエネルギーを性的な欲動と仮定する理論)を批判し、人にとって最も重要な欲求(ニード)は安心感、安全感、つまり自分にとっての重要人物からの承認の欲求であ ると主張しました。
そして、精神分析では軽視される患者と治療者の間の相互作用や、患者の置かれている社会、文化的背景、現実の対人関係などといった社会学的な側面を重視し心理臨床(人の心や『精神障害』の理解とその治療)に応用していきます。
また、サリヴァンはさまざまな研究者や実践家との交流から「精神医学は対人関係の学である」という定式や、『関与しながらの観察』といった心理臨床における重要な概念も打ち出していきます。
このような、心理臨床において社会学的な側面を重視する立場は対人関係論と呼ばれ、サリヴァンと同じ考えを持つ精神科医や分析家が集まり形作られていきました。
- 関与しながらの観察(participant observation)
サリヴァンは精神障害の治療において、治療者は一方的な観察者として存在することはありえず、治療に関与している治療者自身の要因も含めて、患者の精神状態を考えなければならないと考え、関与しながらの観察を提唱しました。
『参与観察』や『関与観察』とも呼ばれ、外部から集団を客観的に観察する『非参与観察』と対比されます。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.
横川滋章・橋爪龍太郎(2015)『生い立ちと業績から学ぶ精神分析入門 22人のフロイトの後継者たち 』 乾 吉佑 (監修), 創元社.
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\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。