エーリッヒ・フロム(Erich Seligmann Fromm)
エーリッヒ・フロム
”エーリッヒ・フロム(Fromm, E.)”は1900年から1980年にアメリカで活躍したドイツ人の精神分析家であり、社会心理学や哲学の研究者になります。
『対人関係論』の創始者の一人として知られています。
1900年に、ドイツのフランクフルトで、ユダヤ教を信仰する両親のもとに生まれます。
大学では、社会学や心理学、哲学などを学び、1925年以降には、”フロイト(Freud, S.)”が創始した『精神分析』に関心を持ち、精神分析家として活動します。
また、対人関係論の創始者の一人である"フロム・ライヒマン(Fromm-Reichmann, F.)"と結婚しますが、後に離婚します。
しかし、離婚後も二人の交流や親交は続いたとされています。
1933年、ナチスの迫害から逃れるため、スイスのジュネーヴに移り、その後、”ホーナイ(Horney, K.)”の誘いを受けアメリカに渡ります。
そして、1934年に、"サリヴァン(Sullivan, H. S.)"やフロム・ライヒマンらとともにウィリアム・アランソン・ホ ワイト研究所をニューヨークに設立し活動します。
人の心や『精神障害』の理解について、精神分析が個人の精神内界に着目し扱うのに対して、フロムは人間が実際に 生きている社会のあり方や歴史も含めて扱おうとしました。
また、ナチスによる独裁を経験したフロムは著書『自由からの逃走』を執筆し、古い君主制から脱却し自由と民主主義を手に入れたはずの人間が、なぜナチスといったファシズム(全体主義)に服従しするようになったのかを明らかにしようとしました。
フロムは自由からの逃走の中で、人は資本主義の発展により自由や個性を得ることになった反面、自由を得たがゆえに1人で世界に立ち向かわねばならなくなり、一層孤独と無力感を抱えることになったと記します。
そしてその結果、人は権威にすがり主体的な生き方を放棄した いと望むようになることさえあると考えました。
晩年には、著書『愛するということ』を執筆し、人の愛や成熟について語り、人間の限界を知りつつ人と社会を信じようとする姿勢を貫きました。
参考・引用文献
森岡正芳編 (2022) 『臨床心理学中事典』野島一彦 (監修), 遠見書房.
日本心理臨床学会編(2011)『心理臨床学事典』 丸善出版.
横川滋章・橋爪龍太郎(2015)『生い立ちと業績から学ぶ精神分析入門 22人のフロイトの後継者たち 』 乾 吉佑 (監修), 創元社.
\この記事を書いた人/
臨床心理士・公認心理師
上岡 晶
Ueoka Sho
精神科・心療内科での勤務を経て、2023年から「オンラインカウンセリングおはぎ」を開業しました。私のカウンセリングを受けてくださる方が少しでも望まれる生活を送れるように、一緒に歩んでいきたいと考えています。